2022年には15年ぶりに、古巣の愛媛FCへ復帰。翌2023年は出場の機会こそ少なかったものの、中心選手のひとりとしてチームを鼓舞する。チームをJ3優勝に導き、J2昇格に大きく貢献したのが、森脇良太である。
本職はサイドバックだが、入団したサンフレッチェ広島では、強引な突破とシュートが持ち味のセンターバックとしても活躍。そんな森脇の問題発言が物議を醸したのが、浦和レッズ在籍中の2017年5月4日、第10節の鹿島アントラーズ戦でのことだった。
森脇は2012年12月に、広島時代の恩師のペトロヴィッチ監督率いる浦和へ移籍。以降、浦和では存在感溢れるプレーで活躍していた。
この日は首位攻防戦ということもあり、埼玉スタジアムに詰めかけたサポーターは、5万7000人超。試合は前半24分、鹿島FW金崎夢生が先制点を決めるとその1点を守り切り、1-0で勝利するのだが、問題のシーンは後半33分で起きた。スポーツ紙記者が振り返る。
「右サイドの浦和側コーナーフラッグ付近で、鹿島MF土居聖真がボールをキープ。このボールを浦和FW興梠慎三とDF槙野智章が2人がかりで奪いにいき、鹿島DF伊東幸敏が加勢に入ったところで、審判のホイッスルが鳴りました。ところが、このホイッスルが鹿島側の反則に対して吹かれたものだったことで、興梠が土居を突き倒し、それをキッカケに両チームの選手が集まった。一触即発ムードとなり、試合が一時中断となりました」
ここで仲裁に入ったのが森脇なのだが、試合後、鹿島MF小笠原満男が「これだけは言っておきたい」として取材陣を前に怒りを露わにしたのが、こんな言葉だった。
「ウチのレオシルバ選手に対して(森脇が)『くせえんだよ、お前』と発言をして…。それがどうしても許せなかったですね」
クラブ側もこの発言を問題視。小笠原とレオシルバにヒアリングをした上で、マッチコミッショナーに報告したというのである。
だが、告発された森脇も納得がいかない。
「鹿島の選手2、3人に詰め寄られて唾が顔にかかったので、子供じみた言葉かもしれないが、小笠原選手に『口がくさいんだよ』と発言してしまった。ただ、レオシルバに対する暴言ではありません。小笠原選手が何を思って侮辱的な発言と捉えたか、わかりません。ただ、それを聞いて、彼の人間性にショックを受けました。小笠原選手は僕のことを嫌いなんじゃないですかね」
Jリーグによる事情聴取の結果、森脇には2試合出場停止処分が下された。さいたま市内のクラブハウスで会見を行った森脇は神妙な面持ちで謝罪したが、それでも差別発言に対しては頑として否定。両選手だけでなく、両チームのサポーターにとっても、後味が悪い幕切れになってしまったのである。
(山川敦司)