春のGⅠシリーズ第2弾は、17年にGⅠに昇格して8年目を迎える大阪杯。
芝2000メートル戦が重視されるのは、世界的な傾向だ。スピードがあり、それなりに持久力が備わっていなければ勝ち切れず、その両方を兼ね備えているからこそ、種牡馬としての価値が高くなる。牝馬にとっても交配する種牡馬の選択の幅が大きくなり、産駒の質も高まるというわけだ。
同距離でのGⅠ戦は大阪杯の他に皐月賞、秋華賞、天皇賞・秋、そして2歳馬の総決算、ホープフルSの5つを数えるが、古馬による戦いとなるこの大阪杯と秋の盾は特別だろう。
今年もとにかく顔ぶれが多彩だ。フルゲート(16頭)必至で、GⅠ勝ち馬はキラーアビリティ(ホープフルS)、スタニングローズ(秋華賞)、ジオグリフ(皐月賞)、ソールオリエンス(皐月賞)、タスティエーラ(ダービー)の5頭。その他にもGⅠを勝っても不思議のない実力派や、ノビシロ十分なスター候補が居並び、まさに見応え満点の激しい競馬になること請け合いである。
まずはデータをひもといてみよう。03年に馬単が導入されて以降、これまでの21年間、その馬単での万馬券は5回(馬連は3回)。この間、1番人気馬は8勝(2着5回)、2番人気馬は4勝(2着3回)。以前は大きく荒れることは少なく、1、2番人気馬のいずれかが連対を果たす中穴傾向のレースだったが、GⅠ昇格後のこの7年間、3回も馬単万馬券が飛び出している点は留意しておいたほうがいい。
年齢的には過去21年間で10勝(2着7回)を挙げているように、4歳勢の活躍が目立つ。充実著しい5歳勢も差はなく9勝(2着7回)と、この両世代のいずれかを主軸に置くのが馬券の筋ということになる。
また、過去7年では牝馬が3勝(2着2回)と健闘していることは特筆していいだろう。
もろもろ考慮した上で、最も期待してみたいのは、5歳牝馬のルージュエヴァイユだ。穴党としては、前走の京都記念で2番人気に支持されながら8着に敗れ、ここでの評価が下がったことは、ありがたい。
しかしその前走は、3カ月ぶりの実戦で、まだ余裕残しの状態(前走比10キロ増)。本来の姿ではなく、やむをえない結果と言っていい。それでも大きく敗れたわけではなく、巻き返しは大いに可能だ。
実際、この中間の状態はすこぶるよく、気配も上々。1週前の追い切りも力強く、それでいてリズミカルだった。
「馬体が締まり、活気が出てきた。力を出せる状態にある」と、黒岩調教師をはじめ、厩舎関係者は納得の表情を浮かべていたほど。
コーナー4つの内回りで行われる阪神での競馬は初めて。そのあたりを不安視する向きもあるが、以前と違って脚質に幅が出て、前々で立ち回れるようになっているため、問題はないだろう。
重賞勝ちはないものの、昨年はエプソムC、府中牝馬S、そしてエリザベス女王杯と3戦連続で2着している点は高く評価してよく、何より血統(母系)がいいことは強調したい。
祖母デインドリームは凱旋門賞の勝ち馬で、ヴェールタマンド(ガネー賞)、ルネンジョーン(パリ大賞典)、グルームダンサー(リュパン賞)、さらにはキンシャサノキセキ(高松宮記念連覇)など近親、一族に活躍馬がキラ星のごとくいる血筋。
持てる力を出し切れれば、牡馬相手でも頂点に立ってよく、良馬場条件に大きく狙ってみたい。