スペインのFCバルセロナのホームスタジアム「カンプ・ノウ」は、収容人数9万9354人を誇る、ヨーロッパ最大のスタジアム。サッカーファンにとっては憧れの場所だ。
そんなカンプ・ノウのピッチに初めて立った日本人は、城彰二氏。自身のYouTubeチャンネルで、初めて試合をした時のことを振り返った。
聖地とも言えるカンプ・ノウの控室は意外なものだったそうで、
「アウェーのロッカールームって、とんでもなく汚い。ボロボロで超汚い。トイレもむき出し。バルサの控室は絨毯が敷いてあって、キレイなのに」
ホームとアウェーでかなり差をつけられていたというのだ。それでもさすがはカンプ・ノウ。ピッチに出る瞬間を、城氏はこう表現した。
「ロッカールームを出ると、階段を下りきったところにマリア様が飾ってあって、みんなお祈りをして階段を上がっていく。出口が狭くて、出た瞬間に観客席がすり鉢状に見えて、覆いかぶさってくるような感じ。あれを見た瞬間に、もう大興奮」
その状況を思い出したのか、今も興奮ぎみだ。
そんなカンプ・ノウで試合ができ、しかも相手がバルセロナとあって、城氏は気合十分だった。
「アウェーチームが先にピッチに出て、ラインズマンと一緒に並んでいると、バルサ行進曲が流れて1人ずつ入ってくる。かっこいい。マジ、かっこいい。バルサやレアルとの試合は、選手としては興奮する。テレビでしか見たことがない選手で、この競技場でできるんだ、って。頑張りたいと思ったけど、他の選手は逆。みんな暗いの。緊張しているの。言葉数、少ないし。『なんだよ、やろうぜ!』って言っても『ああ』って」
ハーフタイムにバルセロナのルイス・フィーゴ(ポルトガル代表)に声を掛けられたことが忘れられない、と城氏。フィーゴ夫人が寿司店を開くため、日本人の城氏に味をみてほしいとお願いされたという。城氏は快諾し、試合後にユニフォームを交換する約束をする。ところが、
「フィーゴは前半で交代。試合後、交換しようとしたら、プジョル(スペイン代表)がやってきて、シャツを代えろって。フィーゴと代えるんだと言ったら、関係ないって。圧がすごいから交換した」
のちに寿司店を訪れた時に、フィーゴからサイン入りのユニフォームを贈られた。
強引に交換させられたプジョルのユニフォームだが、意外な人の手に渡る。
「いしだ壱成とすごく仲が良くて、スペインに見に来てくれるぐらい。バルサファンだったの。壱成が俺の家に泊まりにきて、プジョルのユニフォームを見せたら『これ、いいね』って。本当にバルサが好きだから、じゃあいいよ、あげるよって」
この試合は0-4の完敗に終わるが、城氏は大活躍。初のカンプ・ノウで爪痕を残した。その裏側には、こんな数々のエピソードがあったのである。
(鈴木誠)