なんと26年ぶりに登場した熱血教師だった。4月1日の特別ドラマ「GTOリバイバル」(フジテレビ系)で反町隆史が演じた「グレイト・ティーチャー・オニヅカ」だ。
1998年放送のオリジナルの凄さを実感するのは、反町と松嶋菜々子夫妻はもちろん、当時、主要登場人物を演じた面々が、今もイケ渋なオヤジ俳優として第一線で活躍していることにあった。
窪塚洋介、小栗旬、池内博之、山崎裕太のほか、主役・鬼塚英吉の親友・冴島龍二を演じる藤木直人が、エリート警察官僚として登場。藤木が警察車両から降り、反町が愛用するKawasaki製バイクを2人で押すシーンは、同局の名作ドラマ「ビーチボーイズ」のオマージュになっていた。
ここでふと疑問がよぎる。藤木演じるスマートな警察官僚の冴島は、原作コミック「GTO」(講談社・週刊少年マガジン・藤沢とおる作)ではリーゼント姿の不良警官という設定だ。ところが冴島がどんなに改変されようと、Xでは「藤木直人」がトレンドワード入りするほどの大反響に。
片や昨冬放送の「セクシー田中さん」(日本テレビ系)は、原作改変をめぐって大論争が勃発し、作者の芦原妃名子氏が転落死する最悪の結果を招いた。
しかも「セクシー田中さん」騒動では、誹謗中傷まがいの書き込みをしていた中高年マダムたちが、改変キャラの藤木に「いいね」を連発している。
「週刊少年マガジン」のライバル誌、集英社の「週刊少年ジャンプ」に連載していた鳥山明原作の「ドラゴンボール」や、尾田栄一郎作の「ワンピース」実写版に至っては、原型を留めているのか微妙な出来である。それでも少年マンガ誌原作の実写版の改変が、全く炎上しないのはなぜなのか。テレビ関係者が解説する。
「発行部数の差があります。公称部数は『週刊少年ジャンプ』が113万部、『週刊少年マガジン』は35万部で、人気作の単行本は100万部単位のベストセラーになるのに対し、女性コミック誌の発行部数は、わずか2万部。女性コミック誌は『セクシー田中さん』のように性的マイノリティーなどの重いテーマを扱いやすい一方、大衆ウケすることをよしとしない価値観、文化があるのも事実です。少年マンガ誌の人気コミックはドラマやアニメ化の際に原作を改変される一方で、作者のメッセージを広く伝える作品展で、原作ファンの溜飲を下げています。フジテレビはアニメ制作の歴史が古く、出版社や作者とコミュニケーションを取ることに慣れている。『セクシー田中さん』は原作が広く知られるようになってほしい、という出版社と日本テレビ、作者の共通の目標をどこかで見失ってしまったのでしょう」
日本テレビ第三者委員会の調査結果が待たれるが、もともと女性コミック誌特有の陰キャは好き嫌いが分かれる上に、ネット炎上や熱狂的ファンの誹謗中傷にドン引きして、女性コミック誌を敬遠する向きもあるだろう。
「言いたいことも言えないこんな世の中」だから、視聴者は「GTOリバイバル」や「不適切にもほどがある!」のように、難しいこと考えずに楽しめるドラマやコミックを求めているのだから。
(那須優子)