ボクシング・井上尚弥の「5.6東京ドーム世紀の決戦」に水を差す事件が勃発した。次代のスター候補「ネクスト・モンスター」と呼ばれる、WBC世界フェザー級8位の堤駿斗(志成ジム)が、世界ランカー対決の前日計量で「体重超過」の大失態を犯したからだ。
堤は東京・後楽園ホールで4月17日に行われる、元WBA世界バンタム級王者で現WBA世界フェザー級9位アンセルモ・モレノとのフェザー級10回戦を控え、4月16日に日本ボクシングコミッションで前日計量に臨んだ。
ところが、フェザー級のリミット57.15キロを1.6キロも超過する58.75キロ。2時間の猶予が与えられた堤は、再計量でもわずか50グラムしか落ちなかった。
両陣営は7%超過までの条件で、対戦に合意。当日午前10時に再計量して61.12キロ以内であれば試合を行う、としていた。
那須川天心と幼なじみという堤は、アマ13冠をひっさげてプロ入り。ジャブを武器に試合をコントロールし、相手を追い詰めて中盤から終盤に仕留めるスタイルで、「井上尚弥2世」と呼ばれるホープとして騒がれた。中量級で世界に通用する希有なボクサーの、まさかの計量失敗に、ボクシング界もファンも失望。
56.8キロで軽量をクリアしたモレノは、
「たいへん失望している。世界タイトルを目指しているなら、体重を作ってくるのはプロとして当然のこと」
と苦言を呈した。
5月に井上と対戦する元WBC世界バンタム級、スーパーバンタム級王者のルイス・ネリが2018年に王座を剥奪された時は、1.36キロの超過だった。しかし、堤はこれを上回る1.6キロで、
「かなり悪質といえますね。階級制を前提としたボクシングでの体重超過は、社会的信用を著しく毀損する行為。『ネクスト・モンスター』の称号は外した方がいい」(スポーツライター)
日本人ボクサーでは2018年4月に、WBC世界フライ級王者(当時)の比嘉大吾が、防衛戦で900グラム超過して王座を剥奪されたことがある。
その際、比嘉はJBC(日本ボクシングコミッション)から無期限資格停止処分を科された(2019年10月に解除)。2020年2月にリング復帰を果たすまで、1年10カ月を要している。
もともと減量が苦手だったという堤。ファンからは期限付きライセンス停止を求める声が上がっているが、そもそも勝負の土俵にすら立てないのだから、その時点で「敗者」になったも同然なのである。
(ケン高田)