4月28日のGI天皇賞・春(京都、芝3200メートル)を圧勝したテーオーロイヤル(牡6歳)。そのケタ違いの強さは、まさに「新長距離王」としての実力を遺憾なく見せつけて余りあるものだった。
レースを振り返ると、スタートから楽々と好位につけたテーオーロイヤルは、その後もゆったりとした構えで外目のポジションをキープし、2週目3コーナーの坂の下りでも慌てず騒がず、マイペースを維持。そして勝負どころの4コーナー手前から「持ったまま」の手応えで先行集団を捲り上げると、最後の直線では鞍上の右ムチに鋭く反応して、他馬を一気に引き離すという離れ技をやってのけたのだ。
厩舎関係者によれば、馬場から引き上げてきた時も息遣いに乱れはなく、涼しげな顔でケロッとしていたというから、まさに怪物級。今回の衝撃的なレースぶりを目の当たりにしたオールドファンの間からは、「かつて長距離路線で無類の強さを見せつけたメジロマックイーンを見ているようだった」との声も上がっている。
レース後、放牧先での小休止に入っているテーオーロイヤルの今後について、陣営からは「今秋、オーストラリアのフレミントン競馬場で行われるメルボルンカップ(GI、芝3200メートル)が次の目標」との声が聞こえてくるが、メジロマックイーンと並び称される同馬には「もっと上」を狙える可能性がある。
それはズバリ、今秋にフランスのパリ・ロンシャン競馬場で行われる凱旋門賞(GI、芝2400メートル)である。
実は同レースでの騎乗経験が豊富な「世界のユタカ」こと武豊はかつて、次のようなホンネを吐露していたことがある。
「メジロマックイーンなら、凱旋門賞を獲れたかもしれない…」
だとすれば、天皇賞でメジロマックイーン級の実力を見せつけたテーオーロイヤルにも、日本調教馬として初の「凱旋門賞獲り」のチャンスは大いにある、ということになる。
世界のユタカの「予言」を胸に、筆者の期待は高まるばかりだ。
(日高次郎/競馬アナリスト)