株式投資で資金追加するなら自分の持つ銘柄にこだわるな!別銘柄を買い増せ!
今回は株式投資の話をしよう。まず、ご自分のことだと思って、以下の設問に答えてみて欲しい。
1年前に、100万円ずつ4銘柄に投資したとしよう。現在、大きく値上がりしたA銘柄、少し値上がりしたB銘柄、少し値下がりしたC銘柄、大きく値下がりしたD銘柄を持っているとする。ここで、200万円ほど追加できる投資資金ができたとしよう。あなたなら、どうするだろうか?
現実に結構多くて、しかし感心しないのは、「調子がいい」、「(自分と)相性がいい」などといって、A銘柄を買い増しするタイプだ。「自分の得意な銘柄を作れ」といった素人向けの株式投資のアドバイスがあるが、これは、顧客に頻繁に売り買いして手数料を落として欲しいと思っている証券会社の回し者的な、不適切な意見だ。銘柄の得意・不得意はたまたまの値上がり・値下がりを背景とした投資家の気分から生まれた錯覚であり、特定の銘柄に思い入れを持たぬほうがいい。
まして、A銘柄はすでに大きく値上がりしているのだから、これを買い増しするとリスクの集中を招く。
少し値下がりしたC銘柄を買いたい向きもおられよう。その心は、「買い増しして平均買い単価を下げて、その後に値上がりしたら、プラスになるから」というものだろう。
一見堅実だと思うかも知れないが、実は、このタイプは相当に危ない。株式投資を一銘柄一銘柄の「勝負」と考えて、「負けの状態を脱したい」と思うのだろう。が、負けている銘柄がさらに値下がりした場合に、追加投資することになりかねない。かつて、倒産前の日本航空の大株主で、「JALは国策企業だから潰れない。株式投資は、値上がりするまで売らなければ負けないのだ」と言い張って、値下がりする過程で買い増した人がいたが、それこそ反面教師だ。
見向きもしたくない投資家もいるはずの、大きく下がったD銘柄を買い増ししようと考える投資家は、先の投資家のように意地を張っているのでなければ、「株は安い時に買う」というセオリーに叶っていて、よいセンスを感じさせる面がある。しかし、自分の持っている銘柄にこだわりすぎるという点では感心しない。
正解は、現在自分が持っていなくて、AからDのいずれとも傾向の異なる銘柄E、Fを買い増しすることだ。付け加えると、大きく値上がりしてウェイトの上がったAの持ち株を一部売却して、さらにもうひとつ別の銘柄Gを買うともっといいかも知れない。
男気にあふれる本誌の読者には、分散投資を拡げていくのは物足りなく思えるかも知れないが、分散投資はしばしば投資家のピンチを救う。力まずに投資銘柄を増やして、気長に行こう。
これからの人は、業種の異なる最低3つ以上の銘柄から株式投資を始めよう。
◆プロフィール 山崎元(やまざき・はじめ) 経済評論家。58年、北海道生まれ。東京大学経済学部卒業後、三菱商事に入社し、野村投信、住友信託、メリルリンチ証券など12回の転職を経て、現在は楽天証券経済研究所客員研究員。獨協大学経済学部特任教授。「全面改訂 超簡単 お金の運用術」(朝日新書)など著書多数。