「売れ筋」の投信にはろくなものがない!「低手数料」「直販」などよい商品は自分で選ぼう
通称「投信」こと投資信託は、政府が拡充しようとしている確定拠出年金やNISA(少額投資非課税制度)の利用で中核になる運用商品だ。しかし、証券会社でも銀行でも、セールスマンが積極的に売ろうとして現実によく売れている「売れ筋」の投信にはろくなものがない。セールスマンは自分の稼ぎが増えるような手数料の高い投信に力を入れるのだから当然だ。
さる1月9日に、投信についてのブログを書いているブロガーがよいと思う投信を投票して選ぶ「ファンド・オブ・ザ・イヤー2014年」というイベントが開かれた。多くのブロガーが自分でも投信に投資しており、商品に詳しい。当日のベスト3をご紹介しよう。
第1位は、ニッセイアセット・マネジメントが運用する「ニッセイ外国株式インデックスファンド」だった。日本を除く先進国20数カ国の株式で構成されるMSCIコクサイという株価指数に連動するように運用される投信で、運用と管理に掛かる信託報酬という手数料が0.39%(税抜)であることが評価された。購入・換金時の手数料は無料である。外国株式にわかりやすく安価に投資できる優れた商品として、誰にでも勧められる投信だ。
第2位は、バンガード・グループの「バンガード・トータル・ワールド・ストックETF」(米株式市場でのコードは「VT」)だった。こちらは、日本も新興国株式も中小型の株式も含めて世界の株式に投資するETF(上場投資信託)で、ニューヨーク取引所などに上場されている(日本株のウェイトは目下10%未満だ)。こちらは米国株と同様の手続きで買えるが、運用管理の手数料が年率0.18%と低く抑えられている。仮に筆者(仕事上投資を控えている)が1本だけ自分で購入するとしたら、この商品を買いたい。
第3位はセゾン投信の「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」だ。こちらは、世界の株式・債券に投資するバランス・ファンドで、バンガード・グループが運用する商品に分散投資する。
この商品は通称「直販」と呼ばれる、証券会社や銀行を介さずに、運用会社が顧客に商品を直接販売するやり方で売られている。販売会社の営業方針の都合で、解約が集中して運用が悪影響を受けるような心配がない点がいい。直販の投信会社の商品は、ほかに2本、鎌倉投信のものと、レオス・キャピタルワークスのものがベスト10にランクインした。各社いずれもセミナーを頻繁に開くなど、情報提供と顧客サービスに熱心だ。
すべての商品が、証券会社や銀行が力を入れて売る高手数料の商品ではない。投信だけでなく、生命保険でも、不動産でもそうだが、わざわざ売りに来る商品にろくなものはない! 商品は自分で選ぶのが大原則だ。
◆プロフィール 山崎元(やまざき・はじめ) 経済評論家。58年、北海道生まれ。東京大学経済学部卒業後、三菱商事に入社し、野村投信、住友信託、メリルリンチ証券など12回の転職を経て、現在は楽天証券経済研究所客員研究員。獨協大学経済学部特任教授。「全面改訂 超簡単 お金の運用術」(朝日新書)など著書多数。