未来に集中してお金を動かそう 一生役立つマネー運用五箇条
本連載は今回が最終回だ。まとめの意味も含めて、親愛なるオヤジ読者に向けて、一生役立つマネー運用の心得五箇条をお届けしよう。
その一、お金の話では他人を信用するな。他人の話を頼って自分のお金を動かしてはいけない。金融マンが儲け話を勧めてくれるのは、自分では儲からない話だからだ。彼らはプロなのだから、本当に儲かるものは他人に回さない。筆者のような評論家も含めて「専門家」が、素人よりも相場を当てられるわけではない。ただ、解説がうまいだけだ。また、人は怪しいものに手を出すと、仲間が欲しくなる生き物だから、友人のクチコミも信用しないほうがいい。お金は、自分のわかる範囲、計算できる範囲で動かそう。
その二、配当・分配金にこだわるな。特に毎月分配型の投資信託は最低だ。高齢者は、利息や配当、分配金を重視すべきだというのは誤った先入観だ。しかし、金融業者がこれを利用して悪い商品を売っている。高齢に近づきつつあるご同輩には、大いに気をつけてほしい。運用にまで年を取らせる必要はない。
その三、NISA(少額投資非課税制度)とDC(確定拠出年金)は目一杯使え。
現在、お金を運用した利益には2割の税金が課される。これを回避できるのが、NISAとDCだ。NISAは日本の成人なら誰でも利用でき、1年当たり100万円までの投資の利益が5年間非課税になる。DCは、勤め先の会社にある場合とない場合があるが、ない場合には、個人型確定拠出年金が利用できることが多い。DCは給料から税金を引かれる前のお金を積み立てられるので、節税のメリットが大きい。どちらも、使わないともったいない。ひと手間掛けて調べる価値がある。
その四、インデックスファンドを買え。リスクを取って運用する対象として、現在、わかりやすくて手数料が安く、誰にでもお勧めできるのは、インデックスファンドと呼ばれる、株価指数に連動するように運用される投資信託のみだ。手数料は博打ならテラ銭だ。投資信託は手数料の安いものがいい。日本株は「TOPIX連動型上場投資信託」(コード番号1306)、外国株式は「ニッセイ外国株式インデックスファンド」が現在お勧めできる。いずれも、ネット証券で買える。内外の株式をおおむね半々に買うといい。リスクの大きさは、投資金額の多寡によって「自分で」調節しよう。金融マンに丸投げはいけない。
その五、自分の買値にこだわるな。株式でも、投資信託でも、自分の買値にこだわって処分を決めるのは愚かだ。過去は将来に関係ない。まして、損を取り返そうなどと考えるのは大怪我の元だ。変えられるのは未来だけだ。運用も人生も未来に集中しよう。ご愛読ありがとうございました!
◆プロフィール 山崎元(やまざき・はじめ) 経済評論家。58年、北海道生まれ。東京大学経済学部卒業後、三菱商事に入社し、野村投信、住友信託、メリルリンチ証券など12回の転職を経て、現在は楽天証券経済研究所客員研究員。獨協大学経済学部特任教授。「全面改訂 超簡単 お金の運用術」(朝日新書)など著書多数。