アメリカのテキサス州オースティンにある「奇妙な博物館(Museum of the weird)」はその名の通り、世界各国から謎の生物などの死骸や遺骨など、不思議なものばかりを集め、展示する博物館だ。オーナーのスティーブ・ブッチ氏は、珍品コレクターとしても知られる人物。
そんなブッチ氏が、値段は非公表ながら、ネットオークションで落札したものがある。現在、この博物館に展示されているのだが、それが1960年代後半に氷漬け死体で発見されたとされる未確認動物(UMA)、「ミネソタ・アイスマン」だ。
この不思議な死体が半世紀以上の歳月を経て、なぜブッチ氏のもとへたどり着いたのか。そこには、映画を地で行く奇々怪々の変遷があったのだ。さっそく、世界のUMAに詳しい専門家の解説を聞いてみよう。
「ミネソタ州で見つかったというこの冷凍死体は、全身が暗褐色の毛に覆われ、獣人とも類人猿とも見えるもので、身長は約1.8メートル。発見後、フランク・ハンセンという人物の手にわたり、彼がアメリカ各地で『氷河期から来た男』という触れ込みで見世物小屋に出しました。その噂を聞きつけたのが、アメリカの動物学者で未確認生物研究者である、アイヴァン・サンダーソンだった。そしてハンセンに調査を申し出た。そこでハンセンは、直接UMAに触れないことを条件にこの申し出を受け、3日間にわたる調査が行われました。その結果、この冷凍死体は未知の霊長類の可能性があると判明して、大騒ぎになりました」
この調査により、別の新事実も判明した。死体の後頭部に残された、銃で撃たれたような痕跡だ。つまりこの獣人は太古の時代に氷漬けされたのではなく、銃が発明された時代に射殺され、氷漬けにされた可能性が高いことがわかったのである。UMA研究家が続ける。
「調査結果がメディアで大々的に報じられたことで、FBIが猿人射殺事件として捜査に乗り出した。ハンセンにも事情聴取が行われたようですが、死体もハンセンも忽然と姿を消してしまったというんです。しかもその後、ハンセンがベトナム戦争の従軍兵士であることがわかった。つまり、死体はベーリング海で発見されたものではなく、ハンセンがジャングルで捕獲した猿人と思われる生物をベトナムから秘密裡に持ち帰り、見世物小屋に展示していたのではないか、という疑惑が持ち上がったのです」
とはいえ、「冷凍死体」の行方は杳としてわからなかった。ところが数十年を経て、スイスのローザンヌ州立博物館に移管されていたことが判明。その後、めぐりめぐって、現在の「奇妙な博物館」にたどり着いたとされる。
死体の正体についてはクロザルかイヌイット、ネアンデルタール人という説もあるが、いまだはっきりとした答えは出ていない。まさに不思議なUMAなのである。
(ジョン・ドゥ)