サッカーの欧州リーグは次々と最終節を迎えている。そこで、海外で活躍する日本人選手の今シーズンを振り返る「海外サッカー日本人プレイヤー/リアル通信簿2023-2024」。忖度なしのレーティング企画(5点満点)の第2回をお届けする。
今回取り上げるのは、フランスの名門・ASモナコに所属するFW南野拓実だ。
実は、南野のシーズン開幕前の評価は散々たるものだった。フランスのリーグ・アンに詳しいサッカーライターが解説する。
「プレミアリーグ(イングランド)のリヴァプールから、22年6月に鳴り物入りで加入しました。しかし、22/23シーズンのリーグ戦は18試合の出場にとどまり、ゴール数はわずか1点。移籍金1500万ユーロ(現在のレートで約25億円)に見合った活躍には程遠く、サポーターの期待を裏切ったとして〝お払い箱〟の烙印を押されました」
しかし、今季は開幕戦でスタメンを飾ると、第2節のRCストラスブール戦で2ゴールを決め、次節のFCナント戦でも1点を奪い、南野はまたたく間に輝きを取り戻したのだ。その理由について、前出のサッカーライターが続ける。
「新監督に就任したアドルフ・ヒュッター氏は、南野が海外リーグに初挑戦したRBザルツブルグ(オーストリア)時代の恩師でした。前シーズン、フォワードからサイドハーフまでコロコロ変えられていたポジションに苦戦したり、チームにうまく溶け込めていなかった南野をヒュッター監督がサポートしたんです。攻撃の起点を任せて自信を取り戻させると、チーム内での信頼度が急上昇し、次第にボールが集まるようになって、キレのあるドリブルでガンガン仕掛けるようになりました」
そして2月には、サポーターのファン投票で80%以上の圧倒的な支持を集めるという快挙で、月間MVPに選出された南野。すっかりモナコの人気者になると、チームもリーグ2位へと躍進して、18/19シーズン以来、5年ぶりのチャンピオンズリーグ出場権を獲得した。ヒュッター監督への恩返しもできたと言えよう。
南野の「復活劇」はこれだけではない。23年10月にクラブでの活躍が日本代表の森保一監督に認められ、国際親善試合のカナダ戦、チュニジア戦のメンバーに選ばれたのだ。スポーツ紙記者はこう振り返る。
「W杯カタール大会以来、約10カ月ぶりの代表復帰でした。22年のW杯決勝トーナメント1回戦のクロアチア戦では、志願したPKを失敗。本人はリベンジに燃えていましたが、次のW杯も十分に狙える(当時)27歳という年齢でありながら、まるで〝過去の人〟扱いで、森保ジャパンからお呼びが掛からなかったんです。背負ってきたエースナンバーの10番も、FW久保建英かMF堂安律のどちらがつけるのかに耳目が集まり、南野は蚊帳の外。それだけに、普段はマスコミに対して口下手なタイプですが、『(求められれば)どこでもプレーしたい』と、思いの丈を熱く語っていました」
代表復帰後は11試合に出場。AFCアジアカップカタール2023のグループステージ初戦のベトナム戦では、2ゴール1アシストの大暴れを見せた。
「これまでの日本代表では、試合中は強気な性格で『俺がよければすべてよし』という唯我独尊タイプでした。しかし、年長組になったこともあってか、『モナ王~!』(ASモナコと王様をかけた用語)とイジられるなど、雰囲気を和ませる役割も担っています」(前出・スポーツ紙記者)
それでは、通信簿に移ろう。所属チームは2位に躍進し、公式戦31試合で9ゴール6アシストを記録。惜しくも2ケタ得点には届かなかったが、本サイトの既報記事「オーバーエイジ枠の究極隠し玉『あの条件ピタリ男』に大岩ジャパンが急接触中!」でも触れたように、パリ五輪の切り札に浮上している。
絶好調の南野には、優勝を逃したアジアカップの分までうっぷんを晴らしてほしい。通信簿は限りなく5に近い「4」としたい。
(風吹啓太)