2022年末のNHK紅白歌合戦を最後に、翌2023年1月から芸能活動を休止していた氷川きよし。デビュー時から所属していた長良プロダクションから独立し、新会社「KIIZNA(キズナ)」設立を発表したのは4月27日だった。
ところが5月1日付の「日刊ゲンダイ」が〈氷川きよし独立で8月復活も新芸名『Kiina』名乗れず? 前事務所の商標登録で宙ぶらりん〉とのタイトルで、トラブルを報じた。前事務所との間で商標登録をめぐり、芸名使用に黄色信号が点滅している、というものだ。5月22日には前所属事務所が公式サイトで、次のように否定。
〈今後の活動の制約について様々な憶測がされておりますが、弊社は芸名使用に関して一切禁止も制限もしておりません〉
活動再開にあたり、なにかと周囲が騒がしくなっているのだ。
長年にわたって中高年女性のアイドルとして君臨してきた氷川は、その礼儀正しさとファンを大切にする姿勢で、圧倒的な支持を得てきた。そんな貴公子のイメージが揺らぐ騒動が勃発したのが、2014年8月だ。氷川が元マネージャーの男性を殴ったとして、暴行容疑で東京地検に書類送検される騒動だった。
コトの起こりは2014年4月。氷川がこの男性に対し、暴行行為とセクハラを行ったとする疑惑を「週刊文春」が報道したのだ。
記事によれば、男性は氷川から「死ね!」「バカ!」と罵倒され、殴る蹴るの暴行を受けたあげく、ペットボトルの水を頭からかけられ、グッチの鞄で殴られたというから、穏やかではない。
さらに、口にするのもはばかられるようなセクハラ発言もあったとして、男性はそれら暴行の一部始終を録音。その音声データをもとにした告白記事が、世間に大きな衝撃を与えることになったのである。
ところが報道の3日後、今度は氷川がこの男性から数億円を恐喝されていた、との記事が「東京スポーツ」に掲載され、事態はドロ沼の様相を呈することになる。
都内や岡山市内で氷川が男性の頭を平手で殴るなどしたとして、警視庁は8月に捜査結果を東京地検に書類送付。ただ、両者の示談は成立したことで地検は10月24日、氷川を不起訴処分とした。氷川の所属事務所への恐喝未遂容疑がかけられた男性も同日、不起訴になり、事件は一応の決着を見ることになった。
そんな氷川がニューアルバム発表記者会見で、騒動後、初めて報道陣の前に姿を見せたのは、10月31日だった。事件を振り返った氷川は、次のように語って唇を噛みしめた。
「デビューから15年。慢心していたところもあると思います。つらい思いもしましたが、見てくれている人たちはわかってくれているんだな、って。日々感謝して、ひとりひとりの方を大切にできる人に成長したい。歌で伝えていくことがいちばん大切だと。この命ある限り、歌っていきたい」
騒動から10年。芸名使用はすんなりいってほしい。
(山川敦司)
1962年生まれ。テレビ制作会社を経て「女性自身」記者に。その後「週刊女性」「女性セブン」記者を経てフリーランスに。芸能、事件、皇室等、これまで8000以上の記者会見を取材した。「東方神起の涙」「ユノの流儀」(共にイースト・プレス)「幸せのきずな」(リーブル出版)ほか、著書多数。