日本ダービーを逃げ切った馬は、1997年のサニーブライアンを最後に出ていない。1998年以降の逃げ馬の成績は〈0・3・1・20〉。苦戦している上に、今回も逃げるとみられていたメイショウタバルが、左後ろ脚挫石で出走を取り消してしまった。どの馬が逃げるにせよ、厳しい戦いとなるだろう。
枠順からして、①サンライズアースが逃げてもおかしくはないが、陣営は「序盤から出してはいかないと思う」と言う。それだけに展開は読みづらいが、騎手の性格からして、逃げるのは横山典弘騎乗のダノンデサイルではないか。⑤という好枠に加え、同じ馬主の⑨ダノンエアズロックが出走しているからだ。
有力馬の1頭であるダノンエアズロックを援護する形で、逃げの手を打つとみる。ダノンのオーナーであるダノックスは高額馬を数多く所有する大手馬主だが、残念ながら、これまでダービーを勝ったことがない。なんとしても…の思いは強いだろう。
もちろん、ダノンデサイルにチャンスがないわけではない。1月のGⅢ・京成杯を勝っているように、地力はある。うまくレースを運べるようなら、上位争いすることも十分可能だろう。まして騎手は現役2番目の勝利数を誇る名手だ。
しかし、ここは東京で3勝しているダノンエアズロックの方に、大きな期待をかける。セレクトセールで、4億9500万円で落札された超良血馬。馬主サイドとしても、こちらに勝ってもらいたい思いが強いのではないか。
しかも、優勝請負人の「マジックマン」モレイラが鞍上。この馬に2回騎乗して、いずれも勝利している。その2度ともが、東京コースだった。人馬の相性がいい上に、コース相性も抜群だ。
馬を管理する堀宣行調教師は2015年にドゥラメンテで、昨年はタスティエーラでダービーを2勝している名伯楽。モレイラとのコンビでは、2016年に香港チャンピオンズマイルをモーリスで、香港ヴァーズをサトノクラウンで勝利している。さらに2017年には香港クイーンエリザベスⅡ世カップを、ネオリアリズムで制した。名コンビと言っていいだろう。
その2人が期待を込めて送り出す、ダノンエアズロック。どんな走りを見せるのか、楽しみなのである。
グッドラック!
(兜志郎/競馬ライター)