5月26日に迫った、競馬最高峰のレース「日本ダービー」。今年は、無敗の皐月賞馬ジャスティンミラノの圧倒的1番人気が予想されている。
しかし歴史を振り返ると、ディープインパクトなど圧倒的1番人気に応えてスターホースへと昇っていった名馬もいれば、まさかの敗戦でファンの馬券を紙くずに変え、ため息を誘ってしまった馬もいる。まさに「明暗」というやつだろう。そこで今回は、「あのダービー圧倒的1番人気はなぜ負けた」を少々検証してみたい。
2000年以降の日本ダービーで、単勝1倍台で敗れた馬は4頭いる。2007年フサイチホウオー(着順=7着/単勝=1.6倍)、2019年サートゥルナーリア(4着/1.6倍)、2021年エフフォーリア(2着/1.7倍)、2023年ソールオリエンス(2着/1.8倍)がその4頭。近年、急増しているのには理由があるという。競馬誌記者が話す。
「最近は話題の良血馬ほど牧場で馬を仕上げて、前哨戦を使わずにGⅠにぶっつけで走らせるケースが増えました。90年代以前に比べ、トライアルなどの前哨戦を走る回数が激減したことで、ファンはその馬がどのようなレースで、どのように勝てるかのパターンをあまり提供されないまま、評判の良さだけで馬券を買うことになる。これが過剰な人気を生んでいます」
また、圧倒的な人気を裏切った馬たちに共通する特徴があるのだという。
「単勝1倍台で敗れた4頭に共通して言えるのは、前走だった皐月賞で見事な末脚を見せたことです。特にフサイチホウオーとソールオリエンスはその鬼脚が仇となりました」(前出・競馬誌記者)
フサイチホウオーは皐月賞で逃げ切ったヴィクトリーを捕らえきれず3着だったが、そのヴィクトリーよりも2秒も早い上がりタイムで怒とうの追い込みを見せた。レース後も「ダービーは1強」と言わしめたのだ。
そして、まだ昨年で記憶に新しいソールオリエンスは、勝利した皐月賞でまさに鬼脚を繰り出した。4コーナー17番手から16頭をごぼう抜きしたのだから、次走のダービーで圧倒的支持率を受けるのも頷けるだろう。しかし、これにも前出の競馬誌記者は「中山鬼脚の過大評価」と語る。
「直線の短い中山競馬場で鮮やかすぎる鬼脚を繰り出した馬が、直線の長い東京競馬場で期待を裏切るケースはとても多いのです。フサイチとソールはまさにそのパターン。サートゥルナーリアとエフフォーリアは末脚に頼らない先行できる脚質でしたから、ダービーこそ惜しくも敗れましたが、秋以降も勝利することができたのです」
サートゥルはその後もGⅡを2勝、有馬記念2着と奮闘した。エフフォーリアも暮れの有馬記念を制している。
一方で、鬼脚組のフサイチはそのまま1勝もできずに引退。ソールもダービー以降の5戦で勝利なしだ。早熟と言ってしまえば元も子もないが、あの中山での「鬼脚の残像」が作った、実力を超越した過剰な1番人気だったとも言える。果たして、週末のジャスティンミラノはどちらに転ぶのだろうか。
(宮村仁)