昨今、日本各地で大騒ぎになっているクマ出没騒動。先日も群馬県でクマが民家に侵入し、住人夫婦に大ケガを負わせたことが、大きく報じられた。
日本におけるクマ騒動はここ数年のことだが、クマが多く生息する北米などでは、1970年代から人間や家畜がクマに襲われるという事件が頻繁に起きている。
かつて「グリズリー」(1976年公開)という映画に登場したのが、ハイイログマという種の巨大グマだ。ホッキョクグマやコディアックヒグマなどに匹敵する大きさと、獰猛さを持つと言われている。
しかし、実はこれよりもさらに巨大かつ獰猛な「化け物グマ」が、近代まで現存していた、あるいは今もどこかの山奥で生存している可能性があるとされる。それがマクファーレンズ・ベアだ。野生動物の生態に詳しいジャーナリストが語る。
「この巨大グマの存在が明らかになったのは、19世紀半ばのことです。ナチュラリストのロバート・マクファーレンという男が、かつてエスキモーの名で知られた北アメリカ先住民のイヌイットから、このクマの存在を伝え聞いたことが始まりです」
マクファーレンは旅の途中、イヌイットからこの巨大グマを仕留めたという話を聞いたものの、最初は半信半疑だった。そんな彼にイヌイットは、実際に仕留めた巨大グマの頭骨と毛皮を手渡して見せた。その頭骨はマクファーレンが見慣れたクマのそれとは全く異なり、毛皮は一見するとホッキョクグマを思わせるものの、黄色みがかったクリーム色。見たことのないものだった。
驚いたマクファーレンは、すぐにこの謎に満ちた巨大グマを調査してもらうため、頭骨と毛皮をスミソニアン研究所に送る。
しかし、多忙を極める研究所の職員が保管庫に置いたまま、その存在を失念。半世紀以上も保管庫に置かれたままとなった。
だが、マクファーレンが死去する2年前の1918年、動物学者で民俗学者のクリントン・ハート・メリアム博士がたまたま、倉庫に置かれたマクファーレンズ・ベアの頭骨と毛皮を発見する。
「すると、これはホッキョクグマの亜種で、ハイイログマに近いものの、両方に当てはまらないハイブリッド (交雑種) だということが判明しました」(前出・ジャーナリスト)
このクマには「ベトゥラルクトス・インオピナトゥス」という学名が付けられたのだが、発見者であるマクファーレンの名を冠し、通称マクファーレンズ・ベアと呼ばれるようになった。
グリズリーより巨大で獰猛なクマが存在していた、あるいは現存していると考えると、まさに恐怖でしかない。
(ジョン・ドゥ)