東京六大学野球春季リーグ戦は、6月2日に全日程が終了した。
優勝を占う最終週の土日は、早稲田大学と慶應義塾大学の「早慶戦」が行われ、昨年以上の観客を集めて盛り上がったが、1日、2日の2戦とも早大の圧勝。慶大が早大戦に勝ち越した際に逆転優勝の可能性を残していた、明治大学を抑える形で完全優勝(全5カードで勝ち点を上げる優勝)を飾った。
そんな中、大会終了後に発表された今大会のベストナインで、元プロ野球選手・清原和博氏の長男の清原正吾内野手(慶應・4年)が唯一、慶大から選ばれて話題を呼んでいる。
清原内野手は今季、最終戦前までの全試合で4番ファーストを任され、打率と打点でチームトップを記録。12-2で惨敗した2日の早大戦でも、父・和博氏がスタンドから見守る中、初の3番として出場し、1回裏に先制タイムリー2塁打を放ち、存在感を見せた。
そして、ベストナインに選ばれたことで「清原の息子がドラフトにかかるかもしれない」と、野球ファンたちを色めき立たせているというのだ。
ところが、これには野球記者は少々懐疑的な表情を見せる。
「春季リーグ戦ではむしろ、打率.333で本塁打1本、打撃ランキング6位でベストナインに選ばれた東京大学の大原海輝選手に、大学野球ファンは拍手を送っていました。何と言っても大原選手は、最も打てるはずの『東大戦』がない中での記録ですから、素直に凄いですよね。一方で、清原選手は確かに慶大で打率、打点ともトップですが、早大と明大で打撃ランキングのベスト10の8人を占める中、打率は.269で14位。本塁打もゼロです。実は打率・本塁打・打点の3冠すべてで東大の大原選手を下回っています。正直、ドラフトの目玉と呼ぶには物足らない数字と言えます。清原という名前がなければ、ドラフト3~4位ぐらいが現状では妥当でしょう。本人が話しているように『(ベストナインに選ばれて)嬉しいけど、満足はしていない。秋は文句なしで選ばれるように』というのが、ウソ偽りのない本音だと思います」
それでも、野球において「清原」という名前のバイアスは想像を絶する。昨年8月の夏の甲子園で、清原家の次男・勝児選手が代打で登場した際のスタンドのボルテージは凄まじかった。
実際、長男・正吾選手が現状の力でも、持ち前のスター性を重視してドラフト上位指名を検討している球団が複数あるとも言われている。
とはいえ、野球に対してとても真摯だという正吾選手本人はもちろん、父の和博氏も、ドラフトで堂々と指名されるには、やはり秋季リーグで慶大を優勝させるくらいの力を発揮する必要性があると感じているに違いない。
(飯野さつき)