二重国籍騒動の赤いキツネと、学歴詐称疑惑の緑のタヌキの対決…と揶揄される東京都都知事選挙(6月20日告示、7月7日投票)。みど…小池百合子都知事はまだ出馬宣言をしていないのに対し、早々に出馬宣言した蓮舫氏がもし都知事になったら懸念されるのが、現在着工中の東京都治水事業のゆくえだ。
というのも、2019年10月の台風19号で、荒川の水位があと53センチ上がっていたら荒川は氾濫、新海誠監督の映画「天気の子」ラストシーンそのままに、東京の東半分は水没していた。
荒川は北区にある岩淵水門を分離点に、荒川(荒川放水路、人工河川)と隅田川(旧荒川)に分かれる。隅田川の水位が一定基準を超えると隅田川側の水門が閉められ、濁流を荒川放水路に逃して、隅田川流域と両国周辺で隅田川と合流する神田川流域の都心部を水害から守る仕組みだ。今はもう使われていない旧水門は、1924年に完成。100年前の先人の叡智が令和の東京を救ったのだから、胸アツである。
台風19号の襲来によって12年ぶりに水門が閉鎖され、荒川の水位は一気に上昇。「氾濫危険水位」まで「あと53センチ」に迫っていた。特に危なかったのが、足立区と葛飾区の区境にかけられた京成本線の荒川橋梁だ。
京成本線の橋梁は荒川堤防より低い位置に線路が架けられているため、決壊寸前に。荒川の水位はまさに、京成線の線路ギリギリにまで迫っていたのである。当該箇所は現在、橋梁のかさ上げ工事中で、完成は2037年を予定している。
それまでに再び台風19号クラスの雨台風が上陸し、荒川が決壊するとどうなるか。「江東5区大規模水害ハザードマップ」の最悪の被害想定では、荒川区や台東区、足立区、墨田区、江戸川区、葛飾区と埼玉県川口市、八潮市などが水没。板橋区から北区、中央区、江東区も、区面積のおよそ2分の1が水没する。
荒川の氾濫によって、神田川や石神井川など、都内を流れる中小河川は行き場を失い、逆流するとみられる。千代田区、新宿区、文京区、豊島区、練馬区、杉並区…といった山の手地区でも浸水被害が出ると想定されているのだ。
これにより、都民250万人が家を失うという想定で、避難先のないリバーフロント、湾岸のタワーマンションの住人は水没でエレベーターが使えなくなったタワーマンションに住み続けなければならない。地下鉄や東武、京成などの私鉄はもちろん、都心を通るJR山手線や中央線も運休。日本経済が麻痺すること必至だ。
このため、前述した京成本線荒川橋梁のかさ上げのほか、荒川と分岐する隅田川沿岸のスーパー堤防整備事業が現在、進められている。
スーパー堤防といえば、民主党政権時代の蓮舫氏が猛烈に反対していたのはご記憶の通り。都内のスーパー堤防整備事業は2010年の民主党政権による事業仕分け第3弾により、工期半ばで「廃止」評価されていた。
翌年の東日本大震災後、当時の石原慎太郎都知事が蓮舫氏に「スーパー堤防は必要だ」と廃止撤回を求める紆余曲折を経て事業継続している。
日頃の「何にでも反対して、事業を止める」言動が誤解を招き、くだんの台風19号では、浸水被害に遭った二子玉川や武蔵小杉の住民から「蓮舫のせいだ」と怨嗟の声が上がった。
自分と家族の命と財産が危険に晒されるとわかっていながら、なおも懲りずに蓮舫氏に投票する愚民などいるのだろうか。
(那須優子)