記録的猛暑、台風、豪雨、巨大地震‥‥。平成最後の夏、日本を襲った自然災害は全国各地に大きな爪痕を残した。自分の身を守るために防災意識を高めることは大事だが、そもそも自分が住んでいる街はこれまで、どれだけ自然の猛威に耐えてきたのか。調査で見えてきた「負けない」都道府県とは──。
大阪北部地震や西日本豪雨の被害の傷も癒えぬまま、9月には今世紀最強といわれた台風21号が上陸。続けて最大震度7を記録した北海道胆振東部地震が北の大地を激しく揺らした。これは異常現象なのか、それとも今後はこんな状況が当たり前になるのか。防災・危機管理ジャーナリストの渡辺実氏はこう説明する。
「日本の気候を見ても『分岐点』に来ています。これまでの四季折々の温暖な気候から、フィリピンやベトナムのような亜熱帯気候に近くなり、気温上昇、スコール、台風の乱発は今年に限ったことではなくなるでしょう。例えば河川の改修にしても、今までベースにしていた一級河川は、100年に1回降る大雨に耐えられるように河川改修をしていますが、『1時間に100ミリ』級の猛烈な雨が降ることも増え、今までの整備基準ではもたなくなってきました」
自然災害に見舞われることが多くなると想定される中、それ以前に過去、日本各地はどれだけ自然の猛威にさらされてきたのか。そこで、過去に起きた「地震」「台風」「豪雨」「雪害」「土砂災害」「高温」を各データから調査。それをもとに独自のポイントで算出し、「災害に強い」47都道府県のランキングを作成した。
実は1位の滋賀も、西日本豪雨で記録的大雨の被害や、14日連続猛暑日の最長記録を更新し、熱中症で救急搬送された人は前年の約2倍に増えた。それでも他県と比べれば自然災害の件数が少なく、トップに選ばれている。2位・佐賀、3位・香川も、ほとんど僅差で上位に入ってきた。
続いて、各項目ごとに見ていこう。ここ10年で震度4以上の地震が2回以下だったのは、滋賀、福井、三重、富山の4県。この結果について、渡辺氏はこう話す。
「確かに数字だけ見ると少ないですが、正直、日本のどこで大地震が起きてもおかしくありません。名前が挙がった4県にも活断層があるので、地盤が強い都道府県とも言い切れない。残念ながら今の地震学では、活断層が動いたあとに調査をして地震の震源を見つけることはできても、いつ活断層が動くのかはわからないんです」
総合ランキング1位に選ばれた、滋賀の防災危機管理局担当者に話を聞いた。
「今のところ地震が起きていないだけで、滋賀にも活断層はたくさんあります。国のランク付けでも、琵琶湖西岸断層の北部はSクラスです(4段階に分けられ、30年以内に大地震が起きるリスクが最も高い)。全国各地で大規模地震が起きていますので、課題とか対応策をまとめた『地震防災プラン』を作り、決して地震が少ないというスタンスではなくて、起きるというスタンスで備えをしています」
常に危機意識を持つ県であれば、有事にも迅速に対応してくれそうだ。
「地震対策が進んでいる都道府県は、『東海地震』対策を長らく続けている静岡です。行政は官民あげて災害対策に取り組み、学校や病院の耐震化、津波対策で水門の整備など、考えられる対策はほとんどやっています。それでも津波の危険性がある区域にマンションが建つなど、住民の防災意識は下がりつつある」(渡辺氏)
何か起きてからでは遅いのである。