日本ハム・新庄剛志監督が、複雑な胸の内を垣間見せた。
6月4日の広島との試合前に、日本ハム勢がジャックしているオールスターファン投票について、問われた時のことだ。
全10部門中、DHを除く9部門で日本ハムの選手がトップに立っている状況について、新庄監督は「喜び全開の喜びじゃない」と、まさかの返答をした。
いわく「これが例えば、東京ドーム、神宮、広島(マツダスタジアム)とかのオールスターでファイターズの選手が今の選び方されてたら、もうオレは死んでもいい」。今回のオールスターは本拠地であるエスコンで行われることで、余計に投票されているという考えを示したのだ。スポーツ紙デスクがこの見解に反論する。
「今年の『マイナビオールスターゲーム2024』は、7月23日に日本ハムの本拠地・エスコンフィールドHOKKAIDO、翌24日にヤクルトの本拠地・神宮球場で開催されます。確かに本拠地開催チームの選手に票が集まる傾向はありますが、現在、日本ハムの選手に票が集まっているのは、決してエスコンで行われるという理由だけでないことは明白です。チームが好調で、選手の認知度が昨年までとは雲泥の差だからです。何しろ、昨年まで2年連続最下位で5年連続Bクラスだったチームが、現在はソフトバンクに次いでパ・リーグの2位、貯金も9もありますからね。その証拠にヤクルトを見てください。本拠地開催なのに、ファン投票の部門1位は村上宗隆だけ。チームが最下位で、ファンがまったく盛り上がっていないからです」
しかし、新庄監督がオールスターのファン投票に神経質になるのは理解できると、ベテラン野球記者は話す。
「新庄監督は阪神の選手時代、ファン投票外野手部門2位で選出された97年のオールスターで、阪神の応援団から応援をボイコットされるという屈辱を味わっています。オールスター前まで打率2割1分5厘で規定打席到達者33人中最下位と、とても胸を張ってオールスターに出られる成績ではありませんでした。ただ、選んだのは阪神ファンです。新庄自身は『ファンが投票してくれたのは、オールスターで僕のプレーを見たいんだなと思いました。恥ずかしいと思うんじゃなくて、堂々と出たいと思います』と語っていたのですが…」
その、屈辱のオールスター戦。大阪ドームで開催された第1戦で待ち受けていたのは「新庄剛志 そんな成績で出場するな 恥を知れ」という横断幕だった。しかも、新庄が打席に立つと、鳴り物の応援がピタリと止んでしまった。
ファンからの応援がないという異様な空気の中で三振に倒れると、グランドにはメガホンが投げ込まれて、罵声が飛んだ。
阪神応援団の余りにもむごい仕打ちが、現在の新庄監督のトラウマになっていても不思議ではない。
「自軍の可愛い選手たちに、自分と同じ辛い思いはさせたくないという親心なのだと思います」(前出・ベテラン野球記者)
新庄監督は、選出された選手たちを堂々と晴れの舞台へと送り出してあげてほしい。
(石見剣)