セ・パ交流戦は4カードを終えて、首位に立ったのは東北楽天ゴールデンイーグルス。ペナントレース序盤戦はBクラスに沈み、一部コーチの1、2軍入れ替えがあるなど「ボロボロの状態」だった。楽天は指揮官に見切りをつけるのが早いため、一時期は今江敏晃監督の進退が懸念されたほど。しかし、交流戦突入後の好調ぶりは、その監督の手腕によるものだった。
「今江監督はテレビや新聞、ネットなどプロ野球関連のニュースをチェックしています。まあ、たいていの監督はチームの調子が悪い時は見ないものなんですが」(球団関係者)
とりわけ連敗中は、プロ野球関連のニュースなど見たくないもの。当然ながら指揮官への批判は厳しくなるが、今江監督は違った。自身に対する苦言はもちろん、勝敗を分けたシーンの扱われ方、さらに野球解説者の批判コメントも聞き、打開策検討の参考にしてきた。
「小郷裕哉、村林一輝、辰己涼介の1・2・3番の打順は、プロ野球関連のニュースで批判された『打線のつながりのなさ』を聞き入れて、組み替えたものです」(前出・球団関係者)
今江監督はグラウンドに下りてくる解説者に自ら歩み寄り、「どんどん言ってください」「勉強になります」と挨拶をしていたそうだ。東北メディア関係者が明かす。
「昨季、今江監督は2軍の打撃担当コーチでした。チームが低迷すると、途中で1軍担当に配置換え。チャンスで打順が回ってきた選手、代打起用された選手に近づき、狙い球や相手バッテリーのここまでの配球傾向を助言していました。そのアドバイスの的確さ、選手思いな姿勢が評価され、監督に抜擢されたのです」
監督就任会見では、千葉ロッテ時代に薫陶を受けたボビー・バレンタイン元監督の采配を参考にしたい、と語っていた。バレンタイン元監督はアナリストのデータを重視し、毎日のように打順を大きく変えていた。
ここまでの今江監督の采配を見ていると、我慢して選手を使い続けてきた印象が強い。だが、「アナリストのデータ」を「解説者の批評」に置き換えてみると、グラウンド外から打開策を見つける点では共通している。批判を批判と思わない度量の広さ。今江監督の謙虚さが、チームを蘇らせたのだろう。
(飯山満)