昨年1月に、大阪湾に迷い込んだ末に死んだマッコウクジラ「淀ちゃん」の処理方法とその費用をめぐり、大阪市の横山英幸市長は6月13日、市外部監察専門委員による調査チームを設置したことを明らかにした。
この事案は当時の松井一郎市長の指示により、大阪港湾局が8000万円超で処理業者と契約して海に沈めたのだが、処理費はいつの間にか、市の当初の試算の2倍以上に膨らんでいた。当然のことながら「(契約金額には)疑義が残る」との指摘が噴出し、調査が進められることになったのである。しかも市民グループが開示請求した資料は黒塗りのオンパレード。巨額契約についてよほど隠したいことが書かれていたのだろうと、誰もが推察できる。
鯨1頭の処理に大量の税金をつぎ込み、しかも不正のニオイがプンプン。今後、どんな真相が発覚するのか調査の結果を待ちたいが、オカルトやUMA好きな人なら「鯨」「死骸」とくれば、すぐに思い浮かぶのが「化鯨」ではないだろうか。
「化鯨」は水木しげるが描く「ゲゲゲの鬼太郎 妖怪千物語」にも登場するため、アニメファンにはよく知られる存在だが、もともとは島根県の隠岐周辺に伝わる伝説の生き物。「骨鯨」という別称があり、白い骨格だけを残す不気味な姿だとされる。UMAおよび神話に登場する生き物に詳しい専門家の話を聞こう。
「島根半島にある出雲国(現・島根県北東部)は、かつて『鯨海』と呼ばれ、日本海域で最も多く鯨が獲れる場所だったといいます。そのため、隠岐周辺では現在もなお、鯨にまつわる不思議な伝説が多い。有名なのが、隠岐島前指定文化財である天佐志比古命神社(一宮神社)の芝居小屋にまつわる伝承ですね。これは江戸時代の明和年間(1764年~1771年)、知夫湾に鯨が漂着したことに端を発します。その後に火災や疫病の流行が続き、多くの島民の命が奪われたことで『これは鯨の祟りに違いない』と島民は考えた。これは神に何かを捧げてお慰めしなければならない、と。そして、少年が手踊りをして奉納することになった。その手踊りが明治以降、本格的な歌舞伎奉納となったと伝えられています」
つまり、当時の鯨は悪魔の使いならぬ不吉な存在であり、鯨の怨霊として描かれた怪物が「化鯨」だったというわけである。
むろん「化鯨」は伝承上の怪物なのだが、世界各地で発見されているグロブスター(海岸に漂着する正体不明の死骸や肉塊)の中には、容姿が類似するものがいくつもあることから、その存在を肯定する研究者がいるのは事実で、
「1980年初頭、島根と同じ日本海の石川県沖合いで、巨大な骨格を持つ物体が引き上げられました。当時の新聞等で『骨鯨ではないか』と報じられています。広大な海の中にはまだまだ、我々の知らない謎の生き物が存在している可能性があるということですよ」
前出の研究家はそう言って、目を輝かせるのだった。
(ジョン・ドゥ)