大阪湾の淀川河口付近にクジラが迷い込むという、珍現象が起きた。
第5管区海上保安本部に通報が入ったのは、1月9日午前8時頃。大阪海上保安監部によれば、クジラは大阪市西淀川区の阪神高速湾岸線パーキングエリアから南西に約150メートルの付近、大型船が通らない水深が浅い水域で発見された。体長は約8メートル。専門家によれば、マッコウクジラの可能性が高いという。サイエンスライターが解説する。
「マッコウクジラはエサを獲るため深海と表層を行き来しており、その間になんらかの理由で湾に迷い込んでしまったのでは、とみられています。ただ、大阪湾にクジラが生きたまま入ってくること自体が稀な上、淀川の河口まで来た例はほぼありません」
今回のように、クジラやイルカが本来の生息域を離脱して浅瀬に入り込んだり、座礁してしまう「ストランディング」と呼ばれる現象は、エサの深追いや海流を読みきれなかったこと、あるいは寄生虫や感染症などが原因として指摘されるが、ここで気になるのは「巨大地震の前兆現象かどうか」という点だろう。
こうしたストランディングの後に、大きな地震が起きたケースがある。11年2月、ニュージーランドのカンタベリー地震の2日前に、スチュアート島にゴンドウクジラ107頭が座礁した。
日本でも16年に起きた熊本地震の8日前、長崎市大籠町の砂浜にザトウクジラが座礁。東日本大震災(11年)の1週間前には、茨城県鹿嶋市の海岸にイルカの一種であるカズハゴンドウ約50頭が打ち上げられたこともあり、地震との関連性が話題になった。
「これらについては、本震前の余震によって海底で起きた大きな振動で、クジラやイルカが持つ超音波の発信能力がエラーを起こして位置確認ができなくなり、逃げ回るうちに座礁したとの指摘もあります。大阪湾には、阪神・淡路大震災を引き起こした大阪湾断層帯が走っていますが、クジラが迷い込んだことを考えれば、南海トラフの影響も考えられる。いずれにせよ、不気味な現象です」(前出・サイエンスライター)
もちろん、現状でクジラの浅瀬への迷い込みや座礁と地震の関係性については、専門家の間でも意見が分かれるところ。解明はされていないにせよ、警戒するに越したことはないのである。