西武ライオンズ・若林楽人と巨人・松原聖弥の交換トレードが成立した。その前日、6月23日の西武のスタメン表を見てみると、打率1割台の打者が3人もいた。西武関係者によれば、今回のトレードは渡辺久信GM兼監督代行の要望によるもの。松原の即スタメン起用は、かなりの確率で実現しそうだ。
「松原、若林のどちらもリードオフマン・タイプ。松原の方がやや長打力があると評価する人がいれば、若林の身体能力の高さを挙げる声も聞かれました」(スポーツ紙記者)
つまり、プレースタイルが近い選手同士のトレードであって、激貧打にあえぐ西武側の狙いがよく分からないというわけだ。
そもそも西武には若林のような、出塁したらうるさそうな選手が多い。この「同じタイプの選手ばかり」な点に、今季低迷の一因があったのだが、それには松井稼頭央監督の影響が大きかったという。球団関係者が明かす。
「西武フロントは松井監督を呼び戻した2018年シーズンから『将来の1軍指揮官候補』と捉えていました。その松井監督が『機動力の野球をやりたい』と言っていたので、来るべき1軍監督就任に向けて、走れる選手をドラフトで集めてきたんです」
明確なビジョンを持って、ドラフト戦略を立てたというのだ。だがその結果、長打力のある選手が極端に少なくなってしまった。松井体制での大敗は結果論にすぎないが、「機動力一色」となって得点力不足に陥ったことについては、編成トップの渡辺GMが責任を取らなければならない。それが今回の監督代行兼務だった。
チーム再建の参考になるのは、ヤクルトだ。2017年に96敗し、ブッちぎりの最下位に沈んだ。その後、小川淳司監督を挟み、現在の高津臣吾監督で2連覇を果たしている。
「外国人選手が活躍すれば、その間、若手の育成に着手できます」(前出・スポーツ紙記者)
当時の小川氏も渡辺監督代行と同じく、編成トップだった。外国人選手が活躍してくれたから、村上宗隆をスタメンで起用することができた。
西武は今後、ドラフト指名の選択基準を変えるはずだが、まずは松原が活躍しなければ、この重苦しい雰囲気は変わらないだろう。
(飯山満/スポーツライター)