テリー 由紀さんは休みなんてあるの?
由紀 休みっていうか、歌わなくていいとか、メイキャップをしなくてもいい日はマッサージに行くか、メンテナンスに行くか、トレーニングに行くか、三味線の稽古に行くかみたいな。
テリー 意識が高いよね。一日中パジャマのままダラーっとして、ソファでお尻かいてるとかは?
由紀 ウフフ、そういうのはないですね(笑)。お仕事が午後からの日に、「もうちょっと午前中寝ようかな」と思って二度寝するのが、一番の幸せですね。
テリー 年を取って二度寝できるって、それだけで才能だよね。俺なんか朝5時ぐらいに起きちゃうでしょう。「あと2時間ぐらい寝たい」って思うけど、寝られなくて結局、起きちゃいますもんね。
由紀 私は大体7時間は寝ないといけないと思ってるので。「あと2時間は寝なきゃな」と思って寝るようにしてる。
テリー そう思ったら寝られるの?
由紀 寝られます。
テリー それ才能だよね。普段は何時に寝るの?
由紀 私、遅いんですよ。仕事から帰ってきて頭が冴えてると、クールダウンするのに時間がかかるので。
テリー クールダウンってどうするの?
由紀 大体お金の計算してます(笑)。一応、私、事務所を運営する側にもいるので。
テリー お金の計算でクールダウンできます? 興奮してヒートアップになっちゃうんじゃないの?
由紀 でも、自分で使ったお金の精算は、その日のうちにやらないと。溜めちゃうと、ほんとに「これ、何だっけな?」みたいになっちゃうから。
テリー ふーん。由紀さんは普通の会社に勤めたとしても、面白かったよね。常に向上心があるじゃないですか。遊ぶために生きてるよね。
由紀 だって他に何にもできることがないんだもの。そしてやっぱり、女としての人生よりこの仕事を選んできちゃったから。この仕事を選んだという確かな証あかしを見せないと、とは思ってますよね。
テリー それ、いつ頃から思ってたの?
由紀 2度目の離婚をした後ですね。やっぱり自分がこの道を選んじゃったわけだから。もう最初に結婚した相手も亡くなられたんですけど、自分が歌を歌っていくベーシックなものの考え方とか、音楽の捉え方とかは、その方が考えてたことをちゃんと受け継いで歌ってきたんだみたいなことは、今すごく感じるので。
テリー 音楽プロデューサーの方でしたよね。
由紀 はい。それで2度目の結婚は私、婦人病をして、もう子供は持てなくなっちゃったので、そこからの脱却っていうんですかね。すごく苦しい時期がなかったわけじゃないんですけど。そこを再生させてくれたのが2度目の結婚相手だったんですけど、結局は歌を歌うことを選んでしまったので。
テリー 両立はできなかったの?
由紀 うん、できなかったですね。
テリー そうかな。由紀さんは優秀だから、大谷翔平みたいに二刀流でいけそうだけど。
由紀 アハハ、ちょっとスケールが違いすぎる(笑)。
テリー そんなことないですよ。
由紀 でもね、うちの事務所は私がデビューした時に、私のために母が創ってくれたもので、母が亡くなるまでずっと母が中心にいたんですよ。
テリー へぇ。
由紀 それで母が病気になって、余命宣告は私たちきょうだいで聞いたんですけど、事務所をどうするかって話になった時に「私が責任を持って引き継ぐ」って言ったんですね。「自分のために創ってもらった会社だから、閉じる時は私の思いでそうさせてほしい」って母を説得して。だから、そういうこともありますし、中途半端にはやれないですよね。
ゲスト:由紀さおり(ゆき・さおり)1946年、群馬県生まれ。幼少期から児童合唱団に所属し、童謡歌手として活躍。1969年、「夜明けのスキャット」でデビューし、ミリオンセラーに。1983年公開の「家族ゲーム」では「日本アカデミー賞・優秀助演女優賞」を受賞。2012年に紫綬褒章、2019年に旭日小綬章を受章。今年デビュー55周年を迎え、記念シングル「人生は素晴らしい」、3枚組ベストアルバム「由紀さおりベストオブベスト~ 55th anniversary」発売中。また、「由紀さおり 55thコンサート ~新しいわたし~」開催中。