サッカーの2026年北中米ワールドカップ(W杯)に向けた、アジア最終予選の組み合わせが決まった。日本代表はオーストラリア、サウジアラビア、バーレーン、中国、インドネシアと同じC組に入った。
W杯最終予選は9月から2025年6月までに、ホーム&アウェイ方式で実施。3つに分かれたグループの各組上位2チームが出場権を獲得し、3、4位はプレーオフに回って出場権を争う。
北中米W杯から、出場国はこれまでの「32」から「48」に大増量。それに伴い、アジア枠が「8.5」へと倍増したことで、日本のグループに難敵はいるが、過去の最終予選に比べれば出場ハードルは著しく低くなる。
それに対し、グループBに入ったライバルの韓国は、10大会連続出場が途切れかねない「3つの壁」が立ちふさがり、最大のピンチを迎えている。
W杯出場の切符を争う同組には、イラク、ヨルダン、オマーン、パレスチナ、クウェートが入ったが、これが1つ目の壁だ。実は「韓国以外の5チームが中東勢」という、少々どころか、かなり異例の組み分けなのだ。サッカーライターが、この組み分けが韓国に及ぼす影響を説明する。
「中東勢とアウェイで試合をする際は毎回、移動距離の長さに苦しめられます。日本代表のように9割が欧州組であれば、移動距離は短いですが、韓国代表のメンバーは半数以上が国内組で構成されている。それだけに、疲労でコンディション調整が難しくなるでしょう。また、寒暖差や超アウェイのスタジアムの雰囲気、いまだに存在する不可解な判定による『中東の笛』も、かなり厄介な〝敵〟になるでしょう」
韓国メディアは「死の組」は避けられたと報じているが、本来の実力を発揮できない厳しい戦いが待っていそうだ。
続いて、2つ目は「監督問題」だ。
23年2月、06年W杯でドイツ代表を3位に導いたユルゲン・クリンスマン監督が就任すると、今年1月~2月に行われたアジアカップでベスト4に進出。しかし、格下のヨルダンに敗れた低調な試合内容や、選手の管理能力が疑問視され、わずか1年で解任された。それ以来、後任監督が決まっていないのだ。スポーツ紙記者が解説する。
「韓国サッカー協会はすぐに選考を開始し、5月中の正式発表を目指していました。韓国人と外国人の指導者合わせて10人以上の候補者が挙がる中、最有力だったジェシー・マーシュ氏が、5月13日にカナダ代表監督に就任してしまったのです。選考が振り出しに戻ると、それからは空振りの連続。韓国ではサポーターからの批判は日本以上に苛烈で相当なプレッシャーを受けるので、外国人監督に敬遠されているという説があります。このままでは、最終予選も暫定監督のキム・ドフン氏で乗り切るしかないのかもしれません」
たとえ正式に監督が決まっても、一からチームを作ることになる。最終予選にぶっつけ本番で、小手先の戦いで勝てるほど中東勢は甘くはないだろう。
3つ目は、「攻守を支える大黒柱の精神面」の問題にある。
韓国代表の世界的スター選手といえば、トッテナム(イングランド)のFWソン・フンミンとバイエルン(ドイツ)のDFキム・ミンジェ。しかし、シーズンオフの最中、彼らの精神面を揺るがす出来事が起きていた。
まずトッテナムでは、チームメイトのMFロドリゴ・ベンタンクールが母国ウルグアイのテレビに出演した際、ソン・フンミンに対し人種差別発言をして騒動に発展している。
「大バッシングを受けて、SNSを通じて謝罪しました。ソン・フンミンは受け入れましたが、いまだに批判は収まっていません。気まずい空気は新チームに影響を及ぼすため、ベンタンクールの退団説が急浮上しています」(前出・サッカーライター)
一方、昨シーズンのオフに、移籍金5000万ユーロ(約85億円)でバイエルンが獲得したキム・ミンジェは、期待外れのプレーを連発した。チャンピオンズリーグ敗退の戦犯扱いにまでされてしまったキムは、来季こそ奮起するはずだったが…。
「ヴァンサン・コンパニ監督が新指揮官に就任し、第1号の補強は日本代表のDF伊藤洋輝でした。これにより、キム・ミンジェの序列は最後尾に下がり、そればかりか、5年契約なのに早くも放出候補に挙がっています」(前出・サッカーライター)
攻守の要が所属クラブで不安定な時間を過ごせば、代表活動に影響するのは必至だ。
今夏のパリ五輪では、U23韓国代表が10大会連続のオリンピック出場を逃したのは、まだ記憶に新しいところ。負の連鎖がW杯最終予選で起きないとも限らない。日本のライバル、韓国の踏ん張りどころは続く。
(風吹啓太)