テリー パリ公演から戻ってきたら、今度は7月に秋田、8月に東京、11月に横浜で「由紀さおり 55thコンサート」がありますよね。
由紀 はい、来年の4月まで全国各地でやっていく予定です。
テリー どんなコンサートになるんですか。
由紀 この55周年コンサートは、「新しいわたし」ということで、いろいろなことにチャレンジしていこうと思ってるんですけど。今、ちょっと考えているのは、1部で着物を着てジャズを歌って三味線を弾くというコンセプト。三味線の曲は少しずつ変えていけたらいいなと。まだ、そう簡単にいろんなことができるわけじゃないけれど、秋田公演のために練習中です。
テリー 難しいんだ?
由紀 やっぱり師匠のところに行って、お稽古してもらうと、その師匠の独特の間合いはなかなか盗めないですね。
テリー ああ、いいですね。盗むことがあるっていうことは、まだ伸び代しろがあるっていうことだから。由紀さんも楽しいだろうけど、見る方も楽しみだよね。
由紀 私だと10分ぐらいであっという間に終わっちゃうのに、師匠が弾いて歌うと15分ぐらいになって、5分も違うんですよ。
テリー 何が違うの?
由紀 節回しとか、次のシャンと入る音とかの間合いが全然違うんですね。やっぱり都々逸の日本語の歌詞も、自分の節でいいわけだし、テンポも自分の間合いでいけるわけだから。「自分の思った日本語の歌詞をきちっと歌える世界が、ここにこういう形であったんだ」っていうところにたどり着いて。「三味線は伴奏楽器じゃなくて、合いの手だからね」と。
テリー ふーん。素人の俺にはレベルが高すぎて、ちょっと難しいけど(苦笑)。
由紀 だから将来的には、昔の桂三木助さんだったり、玉川スミさんだったり、都家かつ江さんみたいな、ちょっと下卑たネタっていうか、でも、都家さんはそれがウケたお方でもあったわけじゃない?
テリー 三味線漫談をやりたいの?
由紀 やりたいの(笑)。
テリー 面白い(笑)。
由紀 やっぱり究極は一人芸だなって思ってるので。もちろん、みんなの演奏会で行って歌うということもありながら。
テリー 由紀さんは、しゃべり面白いからね。
由紀 だから今、コンサートの中に「由紀さおりのチントンシャンソン」っていうコーナーを作って、都々逸をやってるんです。
テリー 色っぽい都々逸も入るんですか。
由紀 入ります。
テリー へぇ、面白そうだな。8月の東京はどこでやるんでしたっけ?
由紀 文京シビックホール。
テリー ああ、いいところですよね。
由紀 もう今ね、あのぐらいの大きさのホールがほんとになくなっちゃって。中野サンプラザも7000人のホールに建て替えちゃうって。
テリー 今、閉館してますよね。
由紀 7000人も入るような大きいホール、私はいらないんだけど。
テリー 文京シビックのキャパはいくつぐらい?
マネージャー 1800人ぐらいです。
由紀 あと、東京国際フォーラムのホールCが1500人ぐらいかな。あのぐらいのホールがもっとあったらいいのに、みんな5000人とか7000人とかのホールになっちゃうんですよね。私、四畳半でいいんですけど(笑)。
テリー アハハハ、今日はありがとうございました。
由紀 いえいえ。私に何ができるかわかりませんけど、将来はそういうところにたどり着けて、噺家さんのホール落語の色物で「私、使ってくれない?」って。そういうこともやりたいなと、ちょっと思ってます。
テリーからひと言
実は俺、由紀さんのことが大好きで、自分で演出した番組でデートしてもらった仲なんですよ。久しぶりにお会いできてうれしかったな。三味線漫談、いいじゃないですか。色っぽいネタをお願いしますよ!
ゲスト:由紀さおり(ゆき・さおり)1946年、群馬県生まれ。幼少期から児童合唱団に所属し、童謡歌手として活躍。1969年、「夜明けのスキャット」でデビューし、ミリオンセラーに。1983年公開の「家族ゲーム」では「日本アカデミー賞・優秀助演女優賞」を受賞。2012年に紫綬褒章、2019年に旭日小綬章を受章。今年デビュー55周年を迎え、記念シングル「人生は素晴らしい」、3枚組ベストアルバム「由紀さおりベストオブベスト~ 55th anniversary」発売中。また、「由紀さおり 55thコンサート ~新しいわたし~」開催中。