6月25日、山梨県富士吉田市の学校給食に「ビワ」が出された。これを食べた市内の小中学校の児童生徒3500人のうち126人が、のどの違和感など口腔アレルギー反応を訴えた。のどのかゆみや違和感、唇の腫れのほか、充血や腹痛、じんましんなどの全身症状が出た子供もいたという。
同じ給食メニューを食べた市内の保育園ではビワが提供されておらず、アレルギー症状を起こす園児がいなかったため、早々にビワアレルギーと判明した。この季節、道の駅で採れたてのビワが売られていたのに、最近はビワの産地直売を見かけなくなったと思ったら、ビワでアレルギーを起こす人は意外にも多いというのだ。
ビワでアレルギーを起こしやすいのは、3月から4月にヒノキ(カバノキ科)の花粉で花粉症を起こす人。カバノキ科の花粉とビワに含まれるタンパク質が似ており、ビワを口にすると、口の中や喉の粘膜がアレルギー反応を起こす。ヒノキ花粉症は最もメジャーなスギ花粉症の時期と重なっているため、ヒノキ花粉症を自覚していない人は少なくない。ヒノキ花粉の人は豆乳に含まれるタンパク質でもアレルギー反応を起こすため、要注意だ。
同じ原理で、スギ花粉症の人の中には確率は低いものの、夏野菜の代表たるトマトでアレルギーを起こす人がいる。
夏から秋にかけて発症するブタクサ花粉症の人、サクラの季節から半年近く症状が続くカモガヤ花粉症の人は、ウリ科のメロンやスイカの果物アレルギーを起こしやすい。お見舞いやお土産になにかと重宝するメロンだが、持参する前に先方のアレルギーの有無を確認しておいた方がいいかもしれない。
スギ花粉より早く、1月からアレルギー症状が出る人は、ハンノキやシラカンバの花粉症かもしれない。桃やリンゴのアレルギーを起こしやすいのだ。
自分が何の花粉症なのか気になる人は、アレルギー専門医がいるクリニックに相談してほしい。
ひと昔前は果物でアレルギーが出るなんて、思いもよらなかった。今回のビワ集団アレルギーは、子供たちに美味しい国産フルーツを味わってほしいという食育の一環で、不幸なアクシデントというしかない。
口腔アレルギーが判明し、生食のフルーツは食べられなくなっても、ジャムやゼリーなど加熱調理したものなら食べられることがある。
(那須優子/医療ジャーナリスト)