なぜ大谷翔平は毎年6月になると、調子が上がるのか。メジャー通算500打点にあと1、200本塁打まであと3本に迫った6月最終戦は無安打に終わったものの、月間12本塁打、24打点をマーク。日本人選手として最多となる通算5度目の月間MVP受賞が有力視されている。
大谷自身は好調の理由を記者に問われた際、
「シーズンに慣れてくるのもそうですし、シーズンの中でいいところ、悪いところ、いろいろ改善しながら、ちょうど波が来やすいのかな」
「シンプルにストライクを振るっていうのが、一番のポイント」
そう自己分析しているが、ここでひとつ、科学的な分析をしたい。
育ち盛りの子供の身長が伸びるのは、夏至を挟んだ春から夏と言われている。日照時間が長いため、骨を丈夫にするビタミンD、昼間に太陽光を浴びることで夜間の快眠を促す抗酸化作用があるメラトニン、そのメラトニンとの相乗効果で成長ホルモンがより多く産生されるからだと言われている。
対照的に梅雨空で気分が落ち込んだり、冬場に季節性のうつ状態になるのは、日照時間が短いからだ。
大谷がエンゼルス時代から過ごすロサンゼルスは降雨量が少なく、5月から8月の日照時間は、梅雨のある日本の2倍。さらに5月から7月は、朝5時には空が明るくなるため、よりメラトニンの分泌を促す。
メラトニンには細胞の老化を防ぐ抗酸化作用のほかに睡眠誘導、神経細胞保護、抗炎症作用がある。一方の成長ホルモンは睡眠中に子供の成長を促すほか、大人の筋肉や骨格、皮膚を強くする効果、アンチエイジング効果があり、筋肉での効率的なエネルギー代謝を促す。
夏至前後は12時間睡眠を取る大谷にとって、「睡眠ホルモン」「成長ホルモン」のおかげでハイパフォーマンスを発揮できる、ベストシーズンなのだ。
現代社会に生きる我々が気を付けねばならないのは、スマートフォンやゲーム機器が発するブルーライトには、この「睡眠ホルモン」分泌を抑制する作用があるということ。寝る前に何気なく見ているスマホが快眠を妨げ、自分の体や骨格、肌を老けさせてしまっているのだ。
そうはいっても、スマホ断ちは難しい。朝は意識的に太陽の日差しを浴び、入眠2時間前にはスマホのライトを暗くして「睡眠ホルモン」「成長ホルモン」の分泌を促そう。
(那須優子/医療ジャーナリスト)