〈貴殿は過日の記者会見において、原発事故の自主避難者に関し、「本人の責任である」「裁判でも何でもやればいい」などと、被災者の気持ちを逆なでする暴言を連発した。そして昨日、その舌の根も乾かないうちに、「東日本大震災は東北だったからよかった」と復興大臣としてのみならず、政治家として、さらには人間としてあるまじき暴言を言い放った。(中略)すみやかな議員辞職を求めるとともに、貴殿自らが東北各県を訪問し、被災者の方々に直接謝罪すべきであることを申し入れる。以上〉
これは2017年4月26日に民進党東北議員団が今村雅弘復興相に送った抗議文である。
文章を一読しただけでも、議員団の頂点に達した怒りがひしひしと伝わってくるが、そう思われても1ミリも弁解の余地がない暴言が飛び出したのが、前日の4月25日に都内で開かれた、自民党二階派の政治資金パーティーの席上だった。東日本大震災について今村氏は、次のように言い放つ。
「社会資本の毀損25兆円という数字もある。これはまだ東北で、あっちの方だったからよかった。これがもっと首都圏に近かったりすると、莫大な額になったと思う」
死者、行方不明者合わせて1万8000人を超え、家族や友人、家を失い、地域をも失い、悲しみに打ちひしがれながら、それでも懸命に生きている人々に対し、いくらなんでも、それは口が裂けても言ってはいけない言葉だった。
佐賀県出身で東大法学部卒業後、今村氏は国鉄に入社。民営化後のJR九州では重要ポストを歴任し、1996年の衆院選で自民党から出馬して、初当選を果たした。ならば今村氏の地元・佐賀県で同様の被害が発生しても「これはまだ九州で、佐賀だったからよかった」と言えるのか。
今村氏は4月4日の閣議後の記者会見でも、原発事故の自主避難者の帰還について問われ、「どうするかは本人の責任」「(不服なら)裁判でもなんでもやればいい」などと大暴言を吐いている。
そして「責任を持ってほしい」と食い下がるフリージャーナリストに対し、「やっているじゃないか。君はなんという無礼なことを言うんだ!」とブチギレ。揚げ句には「出ていきなさい。もう二度と来ないでください、あなたは」と大暴れし、「うるさい!」と捨てゼリフを吐いて会見を打ち切った。これが猛批判されたばかりだったのだが…。
二階派のパーティーには、安倍晋三首相も参加している。さすがこれは言い訳できないと思った安倍氏は「東北の方々を傷つける、極めて不適切な発言だ」と認め、今村氏は同日夜、辞任の意向を固めることになった。
それにしても、質問者に声を荒らげる大人げなさに加え、復興相としてあるまじき大暴言に、野党は無論のこと、与党からも批判の声が続出。
「福島の農産物が風評被害にあっている、との報道がなされた際にも、もっと生産者が努力すべき、といった趣旨の発言をしましたからね。失言による辞任は時間の問題でした」(政治部記者)
今村氏は当選7回で、自民党の「初入閣適齢期」(当選回数:衆院5回、参院3回)もクリアするベテランだったが、入閣に際し、大臣としての適性と人間性が問われることはなかったようである。
(山川敦司)