2019年に中井貴一主演で映画化された「記憶にございません」を地で行く連日のトボケっぷりには多くの国民がアキレ返り、ウンザリのひと言。それが山際大志郎経済再生担当相の世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係をめぐる、ドタバタ更迭劇だった。
山際氏は2021年10月4日、岸田政権が発足して以降、大臣のポストと同時に、岸田氏が掲げる「新しい資本主義」や、新型コロナウイルス対策も担当する重要閣僚として、その任に就いてきた。
岸田総理は内閣改造を前に教団との関係を点検し、つながりが明らかになった閣僚ほぼ全員を交代させた。一方で、曖昧な説明を続けてきた山際氏が教団との接点を明かしたのは、留任が決まった直後だった。報道や外部の指摘により、接点を裏付ける「証言」が噴出したにもかかわらず、「記憶も記録もない」といいかげんな答弁を繰り返し、ダラダラと大臣の椅子に座り続けることになったのである。政治部記者が山際氏を糾弾する。
「野党の追及が続く中、10月18日の衆院予算委で立憲民主党の後藤祐一議員の追及を受けた山際氏はなんと、『これから何か新しい事実が、様々なことで出てくる可能性がある』と答えています。この発言をもってしても、本人にまるで当事者意識がないことがよくわかる。まったく開いた口が塞がりませんでした」
予想通り、2019年に山際氏が旧統一教会トップの韓鶴子総裁と写った写真(総裁の隣でニッコリしている集合写真)が出てきたことで、さすがに数日前の「2018年の会合で代表の方をお見かけした以外は記憶にない」という説明は通用しなくなり、「ちょっとおぼつかない」といった言い訳が飛び出す始末。
コトここに至って10月24日、山際氏はついに、岸田総理に辞表を提出。前年10月の岸田政権発足後、不祥事による閣僚初辞任という不名誉な事実を残し、内閣支持率低迷を後押しすることになったのである。
ただ、辞任を決めた日の囲み取材でも、その他人事のような言いっぷりは変わらず。
「私は自身に関する資料を1年ごとにだいたい片付けてしまうため、自分自身で過去の出来事を調べられない状況にあった。外部から指摘されることで後追いの形になってしまった」
最後まで「資料を捨てたのでわからない」と強調したのである。更迭は当然のことながら、時間を稼げばそのうち世論やメディアは忘れていく、とでも思っていたのか。改めて岸田政権の危機管理能力とチーム力の完全欠如が国民に露呈した、更迭劇だったのである。
(山川敦司)