9月の自民党総裁選への出馬が取り沙汰されている自民党の石破茂元幹事長が、防衛省・自衛隊で不祥事が相次いでいることについて、ラジオ番組で「責任は政治家が負うべきだ」と述べた。これに「おまいう」(お前が言うな)との声が自衛隊関係者の間から出ている。
石破氏は自身が防衛相だった2008年2月に、イージス艦「あたご」と漁船が衝突し、漁船が沈没して船長ら2人が亡くなる事故が起きた。石破氏はラジオ番組の中でその時のことを振り返ると、こう語った。
「『責任を取れ』と言われた場面がたくさんあった。いつでも辞める覚悟がないと、あんな仕事はできない」
もっとも、海上自衛隊には、「あたご」事件における「石破防衛相」の対応は、いまだに苦い思い出として残っている。それは石破氏が、まだ原因不明な段階で遺族に謝罪のパフォーマンスをし、海上自衛隊に責任をなすりつけていたからだ。5年後の刑事裁判では、あたご側の無罪が確定している。
当時、海上幕僚監部防衛部長だった河野克俊元統合幕僚長は「文春オンライン」のインタビューで、石破氏を批判している。
「(石破氏は)白旗をすぐにあげられたわけです。原因がまだわからないにもかかわらず、ともかく自分は遺族のところに行って、艦長、海幕長も謝罪に行かせて、福田(康夫)総理まで行っているんです。もちろん、亡くなられたことに対して、お悔やみは絶対申し上げなきゃいけないと思いますが、まだ謝罪という段階ではないと思うんですよ」
さる海上自衛隊関係者が言う。
「石破氏はほかにもイラク訪問をドタキャンするなど、決断力がないのに責任は他人に押し付ける防衛相、というイメージでした。今回の発言も他人事だから、責任を取れなどと言えるのでしょう。何を言っているんだ、と怒りがこみ上げますね。とても最高指揮官である首相の器ではないです」
与党攻撃や批判が自らに返ってくる「ブーメラン」は、都知事選で惨敗した蓮舫前参院議員がかつて代表を務めた民進党のお家芸と言われたが、石破氏も同様のようだ。
(奈良原徹/政治ジャーナリスト)