夏ドラマに「異変」が起きている。もともと7月期のドラマは「夏枯れ」と言われる。夏休みシーズンで視聴者が次々と脱落していくからだが、それでも平均世帯視聴率、「TVer」などの配信ランキングで明暗を分けているのが、嵐の二宮和也と櫻井翔だ。
二宮はTBS日曜劇場「ブラックペアン シーズン2」に主演、櫻井も同局金曜22時の「笑うマトリョーシカ」に水川あさみ、玉山鉄二のトリプル主演で熱演中だ。
好調なのは「ブラックペアン」の二宮。7月7日の初回平均世帯視聴率は、NHK「東京都知事選速報」の裏番組ながら、11.8%をマーク。前年夏の超大作「VIVANT」の初回平均世帯視聴率11.5%を超えた。7月14日の第2話も11.9%と、7月スタートの夏ドラマでは唯一、2ケタをキープしている。TVerの夏ドラマ配信ランキングでもベスト10入りだ。
一方の「笑うマトリョーシカ」はリアル社会で政治不信が鬱積する中での、若き政治家をめぐるサスペンスという設定が重すぎるのか、初回視聴率は5.3%。TVerでは13位に甘んじている。
櫻井はSTARTO ENTERTAINMENT社とエージェント契約を結んでおり、相葉雅紀も同社に残ったまま。松本潤は野田秀樹演出の舞台「正三角関係」のロンドン公演を控えているなど、松本と二宮の「独立組」はドラマに舞台にと俳優業に邁進している印象だ。今年は嵐のデビュー25周年だが、独立組のスケジュールを見る限り、グループ活動は絶望的といえる。
嵐の後輩で健闘しているのは「Snow Man」だ。目黒蓮はフジテレビ月曜21時枠「海のはじまり」に主演中で、第1話の見逃し配信数は465万回再生と、過去最高を記録した。ちなみに同局のドラマ再生数歴代1位は530.9万回で、目黒が主演した2022年秋の「silent」である。
「silent」で目黒が演じたのが、耳が聞こえなくなった主人公だったのに対し「海のはじまり」ではブーイングが出るほどの身勝手男を演じている。
亡くなった元カノが子供を出産していたこと、中絶していたと思っていたこと、そして残された子供の世話を現在のカノジョに託す設定が、有村架純演じるカノジョがあまりに可哀想だとして視聴者の不興を買い、初回、第2回と8%をキープしていた平均世帯視聴率は、第3話で7.1%に落ちた。
ただ、修羅場はここまで。後半に向かって子供との信頼関係をどう築いていくのか、これからが見ものだ。
今夏ドラマならではの事情もあると、制作会社幹部は言う。
「パリ五輪中継と重なるため、各局のキャスティングがSTARTO ENTERTAINMENT所属タレントに集中しました。旧ジャニーズ事務所のタレントをキャスティングさせるだけで視聴率が数パーセント上がるという、かつての『神話』にすがった形です。1年前の性加害報道はなんだったのか、という感じです。目黒と同じSnow Manの向井康二はフジ月曜10時『マウンテンドクター』、渡辺翔太はテレ朝の土曜23時『青島くんはいじわる』に、それぞれ起用されている。S社所属タレントが主演、出演するドラマは今期7本ありますが、平均世帯視聴率は7%から危険水域の4%を行ったりきたり。S社の固定ファンの視聴率を差し引くと、家族がリビングに揃って夏のドラマを見ている世帯はもはや絶滅したかと、危機感を抱く数字です」
もっとも、今夏のドラマは隠し子、未成年の妊娠、政治腐敗、不倫…など、とても家族揃って見られるテーマではない。安心して視聴できるのは相変わらず「科捜研の女」と医療モノくらいだ。こうなると家庭のドラマ離れの原因は視聴者より、内容を選ばないテレビ局にあるような…。
(那須優子)