社会

事件・事故・トラブルに巻き込まれても泣き寝入り…夏休みボランティア活動の「理不尽で重大な落とし穴」

 関東甲信越、東海地方の梅雨が明け、夏休みシーズンに突入した。夏休みを利用して、自由研究や高校大学受験のためにボランティア体験を考えている中高生もいるかもしれない。

 だがボランティアには「思わぬ落とし穴」がある。活動中に子供たちが事件や事故に巻き込まれた際の補償がないのだ。

 筆者が注目したのは、埼玉県鶴ヶ島市の社会福祉協議会(社協)が行っている「小中学生のゴミ出しボランティア」だ。同市の社協ではゴミ集積場に自力でゴミを運べない高齢者や障害者に代わり、「ボランティアを希望する」中学生や一部小学生が通学途中にゴミを集積場まで運ぶ取り組みをしているが、この活動について「高校入試の内申書を人質に取られたボランティアの強要だ」などの意見がSNSに寄せられ、炎上した。

 そもそも都内や神奈川県では高齢化と環境美化の観点からゴミ集積場を順次廃止、各家庭ごとの戸別ゴミ収集に変わっている。札幌市では2009年から市の清掃局職員が足の不自由な高齢者や障害者の自宅を回り、戸別ににゴミ収集する「さわやか収集」を導入。東京23区や他県でも、ゴミ出しはシルバー人材センターで有償で請け負うのが主流だ。福岡市シルバー人材センターでは15分100円、30分500円で古紙やゴミの運び出し、掃除や水やりなどを請け負う「ワンコインお助け隊」サービスを提供している。

 これら自治体の取り組みを比べると、鶴ヶ島市と同市社協の「ゴミ出しボランティア」は本来、行政や介護サービス事業所がやるべき業務なのに、「子供のため」と理由をつけて、子供をコキ使っているようにも映る。

 自力でゴミ出しもままならない高齢者ともなれば家の中は煩雑で、衛生上の問題や感染症リスク、さらにゴミの中に危険物が混ざっているおそれもある。さらに同市と社協は、通学途中にボランティアができるかのように説明しているが、この説明には「重大な欠陥」がある。

 というのも、子供たちが通学途中や授業中、部活動中や試合における不慮の事故や事件、アクシデントに巻き込まれて負傷した場合「日本スポーツ振興センターの災害共済給付制度」を利用して、医療費が支給されるのだ。

 日本スポーツ振興センターに確認したところ、この災害共済給付は「学校が認めた活動、かつ学校の管理下にある課外活動」にしか適用されない。つまり、学校ではなく社協の管理下にある通学途中のボランティア活動中に事件や事故に巻き込まれた場合は、同センターの補償対象外になるのだ。

 では、ゴミ出しボランティアに参加する子供達に何かあった場合、どこが責任を負うのか。

 鶴ヶ島市の広報担当者と同市教育委員会、SNS上で筆者を威圧してきた鶴ヶ島市の市議会議員、社協に問い合わせたが「担当者が折り返す」として1週間にわたってたらい回しの末、何の返答もなかった。もし子供達が事件事故に遭っても、彼らは同じように不誠実な言動で「たらい回し」にして、泣き寝入りさせるのがオチだろう。

 東京都江東区でも「小学生のための認知症サポーター養成講座 夏休み特別編」の募集をしているが、晴れて親子で認知症サポーターになったとして、その後、自発的に認知症高齢者の支援をした際に負傷しても、学校共済の対象外であることに留意しよう。こちらの過失で相手にケガをさせたり死亡させた場合は、数千万円から数億円の賠償請求をされることがある。

 ボランティア活動は、高校入試の内申書や大学推薦入試の「アピールポイント」になる。生徒や学生が今夏にボランティア活動を計画しているなら、主催者である自治体やNPO団体が保険代を負担の上で傷害保険に加入しているのか、何かあった時の補償内容について事前に確認してほしい。

「ボランティア」にフンワリしたイメージしか抱かなかった結果、痛い目を見るのは自分自身だ。

(那須優子/フィナンシャルプランナー)

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