パリ五輪開催を目前にした電撃発表が、今も波紋を広げている。6月から7月にかけて喫煙と飲酒という代表行動規範の違反があったとして、日本体操協会がパリ五輪女子代表主将・宮田笙子選手の出場辞退を発表した一件だ。
ケガや体調不良を除いて代表選手が五輪直前に出場を辞退するのは、史上初の不祥事。それだけに元五輪代表選手からは、賛否両論が止まないのだ。
元陸上(ハードル)日本代表選手の為末大氏は自身のXで、同情的な私見を述べている。
〈体操選手が飲酒喫煙が発覚し、五輪を辞退することになっています。自らの辞任なのか、要請され辞任の形を取ったのかどちらかわかりませんが、選手の心境を考えるととても辛いと思います。どうか、協会としても出場できる道を探って欲しいです〉
為末氏だけでなく日頃から保守的な言動、若者蔑視の発言をしているネトウヨ系著名人ほど、意外にも宮田選手への同情論を寄せている。
一方で北京、ロンドン、リオで合計4つのメダル(銀1、銅3)を獲得した元競泳の松田丈志氏は、7月20日にリモート出演した情報番組「ウェークアップ」(日本テレビ系)で、こう話している。
「飲酒、喫煙は法律的にもダメなことなんですが、それとは別にチームで決めたルール、日本代表としてのルールがあります。チームの規範を守れなかったところがもったいなかったなと感じます。チームで戦っていく時にはルールを守らない人がいると、全体の雰囲気にもかかわってくる。そういった面で内部からの報告があったという報道がありましたが、チームとしても足並みが揃えられなかった部分はあったのかなと思います」
主将という立場ながら、自ら禁を破った宮田選手に厳しい見解をぶつけたのである。
特に宮田選手の言動で問題視されているのが、強化試合のため合宿していた東京都北区の味の素ナショナルトレーニングセンター内に酒を持ち込んでの飲酒行為だ。同センターの宿泊施設には他競技の日本代表選手が寝泊まりするほか、ジュニア強化選手も利用する。
五輪直前にケガをしないかセンシティブになっている他競技選手の睡眠や休養の妨げになり、ジュニア選手には悪影響を及ぼす。日本体操協会は宮田選手のプライバシーに配慮し、問題行為の詳細は伏せているものの、身内からの内部告発である上、主将を処分しなければ他の競技団体に「示しがつかない」ほど宮田選手のトレーニングセンター内の振る舞いに問題があったとみるべきだろう。
さらに宮田選手が所属する順天堂大学の公式サイトに出された大甘コメントが、学生の間で炎上している。
〈教育的配慮の点から、常習性のない喫煙であれば、本人の真摯な反省を前提に十分な教育指導をした上で、オリンピックに出場することもあり得ると考えていた。本人が負う社会的ペナルティーの重さへの懸念から、誠に残念な思いだ。学生指導に至らない点があったことは事実であり、この点については猛省するところだ。再起に向けて本人を全面的に指導およびサポートをしていく〉
これに対し、大学生のネットユーザーの意見はこうだ。
「大学のサークル活動や部活動で未成年の飲酒が発覚したら活動停止や廃部になるのに、メダリスト候補なら何をやってもいいのか」
「友人や身内から密告されるほど、日頃の言動や素行に問題があったのでは」
同世代ほど、宮田選手に厳しい意見が目立つのだ。一般学生が未成年に飲酒させる、もしくは飲酒すれば、大学から直ちに課外活動停止処分を食らうのに、五輪代表選手にはお咎めなしの上「五輪に出場させろ」と大学側が肩入れするようなことがあれば、宮田選手と同世代の若者や学生が面白く思わないのは当然だろう。
まして高校時代から、練習態度や生活態度の評判が芳しくなかった宮田選手。五輪辞退の前に高校、大学でオリンピアンに相応しい「生活指導」「人格形成」の猶予期間は十分にあったように思うのだが…。
(那須優子)