とうとう、猛虎にこの男が帰ってきた。
3カード連続負け越しの阪神が7月20日、育成選手の高橋遥人投手と支配下選手契約を締結したと発表した。
育成契約の選手をシーズン中に支配下登録する期限は7月末日。今季、ファームで順調に段階を踏んできた高橋は「間違いなく登録されるだろう」と予想されていたが、この発表はオールスター前に意気消沈気味のトラ党を俄然、活気づけている。
なぜなら、リハビリ期間が長かったことで、常にファンが心配し続けていたからだ。
2018年に阪神に入団した高橋はここまで、とにかくケガと凄い投球が交互に訪れるような波乱万丈のプロ生活を送っている。
デビューイヤーの4月、阪神の新人投手としては1959年の村山実以来となる甲子園での初登板、初先発、初勝利という華々しいデビューを飾り、先発ローテ陣の一角に食いんだ。ところが。6月中旬に左肩のコンディション不良で戦線離脱し、そのままシーズンを終えてしまう。
翌19年は18試合に先発するが、味方打線の援護のない試合が多すぎたせいで、3勝9敗に終わる。20年は左肩の不調のため1軍合流は遅れたものの、10月5日の巨人戦でプロ初完投勝利を挙げるなど、12試合に先発して5勝を記録している。
翌21年、キャンプ中に右脇腹に違和感を覚え1軍を離脱という〝ケガ〟との闘いだったが、復帰した9月に巨人戦でプロ初完封勝利。10月の中日戦でも連続完封を記録して、無双ぶりを発揮した。この年、7試合先発で4勝2敗ながら防御率は1.65、WHIPは驚異の0.71を記録するなど、ファンには「ケガさえなければ…」という印象をさらに植え付ける結果となった。
ところが、22年のキャンプ中の違和感から左肘内側側副靱帯再建術(トミー・ジョン手術)を受け、ついに登板なし。23年は6月に左尺骨短縮術と左肩関節鏡視下クリーニング術を受け、2年連続で1軍登板はゼロ。逸材は、まさに手術に次ぐ手術という状況の中で、ついにシーズンオフに育成選手となってしまったのだ。
在阪のスポーツ紙デスクは「ようやく」と息を吐き、今回の支配下選手契約への流れをまとめる。
「懸命のリハビリを積んだ高橋は、今年はキャンプから少しずつ段階を踏み、2軍の試合でも徐々に球数を増やしていきました。前回登板となった7月14日の広島との2軍戦では8回103球を投げ2失点の好投。いよいよ1軍復帰までのカウントダウンが始まった印象でした」
では、高橋の1軍登板はいつ頃になるのだろうか。在阪スポーツ紙デスクが続ける。
「現在、阪神は6人の先発ローテ中5人までは固定されています。青柳晃洋や伊藤将司が不調で2軍落ちしていますが、20日の広島戦に先発した及川雅貴が6回無失点と好投。オールスター明けに先発として使えそうな目途が立ったので、高橋があわてて1軍で投げなければならない状況ではありません。今後、先発陣の誰かが離脱しない限り、高橋の1軍復帰は早くとも8月終盤になるのではという予測です」
支配下登録の報に「1軍の戦力になれるように、もっと状態を上げていければ」と気を引き締めた高橋。
「アレンパ」へのキーマンとして、ファンが最も待ち望む男。その勇姿を1軍マウンドで見られるまで、あとわずかだ。
(石見剣)