オールスターゲームでこれほど1人の選手に視線が集まるのは、かなり珍しかったのではないだろうか。
7月23日の第1戦(エスコンフィールド)では、地元・日本ハムファイターズの山崎福也が先発登板。2回47球を投げて被安打10、3本塁打を浴びて9失点という散々な結果で、セ・リーグ打者から滅多打ちにあった。防御率は驚異の40.50だ。
さらに打撃が得意な山崎は投手でありながら、いわゆる「大谷方式」を採用して「2番・投手兼DH」で起用され、観客がどよめく事態に。シーズン中(5月30日の阪神との交流戦)に「6番・投手」で先発出場して、先制のタイムリー安打を放った実績があるからだ。
1回裏一死走者なしの場面で打席に立つと、カウント1-1から阪神・才木浩人のストレートを流し打ち。三遊間を破るクリーンヒットに「リアル二刀流!」と歓喜が上がったのである。
投打で記憶に残る「活躍」の山崎だったが、試合後は「歴史に名を刻めたので。しっかり誇りに思って暮らしていきます」と、どこまでもポジティブだった。
もっとも、長いオールスターゲームの歴史では、さらにその上をいく選手がいた。日本ハムの先輩投手、武田勝だ。
武田は2011年のオールスターゲームに2番手投手として出場。打者14人を相手に、球界ワーストの1イニング8連打、4被弾。9失点で撃沈している。レギュラーシーズンではダルビッシュ有、田中将大をも上回る前半戦リーグトップの防御率1.21を誇っていただけに、本人にとっては晴れ舞台での悪夢のような出来事だった。
このことが尾を引いたのか、後半戦は負けが先行し、終わってみれば、防御率は2.46まで悪化。リーグ最多の12敗を記録してしまった。
オールスターゲームでは基本的にどの投手も「直球勝負」で挑むのが慣例になっているが、山崎のような軟投派の投手は勝負球を投げられずに、打ち込まれるケースが多い。日本ハムファンにとって心配なのは、2011年の武田のように後半戦で調子を崩すことだろう。「歴史に名を刻めた」と胸を張って語る山崎の姿を見る限り、杞憂に終わるのかもしれないが…。
(ケン高田)