東京都は7月25日、新型コロナの感染者数が11週連続で増加したと発表した。新型コロナは昨春から5類に引き下げられ、定点医療機関からの1週間ごとの報告を元に、感染状況を発表している。7月15日から21日までの1週間で、都内で把握された感染者数は、定点医療機関あたりでは前週より12%増加したという。
だが、待ってほしい。海外に目を向ければ、コロナ陽性で騒いでいるのは御年81歳の大統領バイデン氏くらいなもの。五輪で盛り上がるフランス、パリ市内やサッカー場にマスクをしている人など、ひとりもいなかった。お上からの「大本営発表」をタレ流している日本のメディアと一部の視聴者だけが、集団ヒステリーを起こしているにすぎない。
例えばテレビに登場しては「コロナ専門家」とうそぶく御用医者たちが語る以下の3点を、ファクトチェックしてみよう。
①夏バテと思ったらコロナだった ⇒ ウソ
②KP.3株にはワクチンは効かない ⇒ 半分ホント
③新型コロナに薬は必要 ⇒ ウソ
そもそも新型コロナの検査キットは「リアルタイムで新型コロナに感染しているか」を調べるものではない。体内に「新型コロナウイルスの遺伝子」があるかどうかを調べているだけで、過去3カ月以内に感染した人でも、検査キットで陽性結果が出ることがある。あるいは夏バテで脱水症状を起こし、新型コロナの感染報告をしているような大きな病院を受診して検査をすれば、4月や5月に新型コロナに感染した人が陽性となる場合も。
この殺人的猛暑で夏バテや体調不良を起こして病院受診する人=母数が増えれば、新型コロナ検査で陽性が出る人も増えるのは当然だろう。一部の御用医者が「夏バテかと思ったらコロナだった」と語っているのは真っ赤なウソ。新型コロナの恐怖心を煽って、再び自分たちだけがボロ儲けしたいだけのマッチポンプだ。
では現在、流行中のKP.3にワクチンは効かないのか。これは半分ホントだ。現在のKP.3株は新型コロナ禍の最後に流行したオミクロン株の変異株だが、オミクロン株は「ただの夏風邪」程度に毒性が弱まった一方で、ワクチンの有効成分である抗体をすり抜けるように変異した。オミクロン株もKP.3株も感染力が強いと言われるのは、感染しても無症状もしくは軽症で済むため、社会的活動に支障を来さないからだ。
そもそもコロナウイルスは変異しやすいウイルスで、ワクチンを作ってもすぐに効かなくなる。過去に中国で流行したSARS、中東で流行したMERSでもワクチンが作られなかったのはそのためだ。欧米のメガ製薬会社が新型コロナワクチンに限って開発したのは、日本のような科学リテラシーゼロの政治家とメディアと視聴者が集団ヒステリーを起こす国が大量に買ってくれて、儲かるからにすぎない。
高齢者や持病のあるハイリスク群は新型コロナ以外のウイルスに感染しても重症化するし、死ぬこともある。健常者が感染しても無症状もしくは「夏風邪」程度の軽症で済むKP.3にワクチンを接種したり、治験で明らかになっている通り、回復が1日か2日早まる程度の新型コロナ治療薬に数万円も出すこと自体がナンセンスだ。
新型コロナには解熱鎮痛剤「カロナール」が効くというデマが拡散、勘違いしている人もいるが、炎天下にわざわざ高い薬を買い求めに行く方が、体も財布にも辛い。医師や薬剤師に確認の上で、家に残っている飲み慣れた解熱鎮痛剤を飲んで済むに越したことはない。高い薬にお金を出すくらいなら、氷枕を買った方が治った後も熱帯夜にも有効活用できるというものだ。
新型コロナでも手足口病でも夏バテでも、対症療法あるのみ。首の後ろに氷枕を当てたり、経口補水液や氷菓、飲むゼリーなどで水分とエネルギー補給をすること。大事なのは、重症化させないために「脱水症状を防ぐ」「体を冷やす」だ。
チーズとワインという発酵技術と細菌ウイルス研究に卓越したフランス人がパリ五輪を楽しんでいるように、3年前の東京五輪だって、新型コロナウイルスを過剰に怖がる必要はなかった。失われた3年の代償はあまりに大きい。
(那須優子/医療ジャーナリスト)