日本時間の7月27日早朝にパリ五輪は開会式が行われたが、大会17日目の8月9日には全世界注目の女性アスリートが登場する。
「世界一妖艶なアスリート」と呼ばれる、ドイツのアリカ・シュミットだ。彼女の出場種目は陸上女子1600メートルリレーだが「17日目まで待てない」という人はご心配なく。インスタグラムのフォロワーが514万人という、アマチュアアスリートとしてはケタ外れの人気とあって、彼女の最新画像などを付けたSNS記事が五輪開幕直前から、あちらこちらで散見されている。
だが、副業でモデル業をこなすそんな25歳の美女のインタビュー記事が拡散されると、その内容に疑問を呈する声が聞こえてきた。
陸上競技の域を超えて活躍するシュミットは、地元の大衆紙に陸上競技で食べていくことは簡単ではない、生活できるほどお金をもらっていないと実情を吐露し、さらに遠征などでは賞金は出るが、交通費や旅費で足が出ることがあるなど、アマチュアスポーツの苦労を説明している。いわく、ほとんどの選手が仕事をしたり、大学に通ったりしているのだ。
だが、そこはフォロワー514万人。シュミット自身は「SNS」を基盤にして「働かなくてもやっていける」という。そして「ソーシャルメディアでお金を稼げ、他の仕事をしなくてすむことに感謝している」とコメントしている。
これに対して、自分で編集しながらSNSを頻繁に更新するシュミットの本気度を称賛する声や、五輪競技で食べていく難しさに同調する意見、また、その美しさに魅了されたラブコールが飛び交ったが、
「スポーツに関していえば、人々の熱狂度がお金につながります。ですから、サッカーやバスケ、日本でいえば野球はプロスポーツとして大金を稼げます。そんな基本的なことを意見する人が、シュミットのインタビュー記事に対して当然いました。『マイナースポーツで稼げないのは仕方ない』と、元も子もないことを言うまで。それでも、メダリストになればスポンサーが付いて稼げるはずだという声は聞かれました。ただし、これは以前からわかっていた意見の数々。実は今回のシュミットの話で、疑問を呈している人の多くは『ルッキズム(外見重視主義)』に対する意見なんです」(スポーツライター)
シュミットが「働かなくてもやっていける」のは、容姿が魅力的だからという事実は間違いない。それは、五輪開幕前からのチヤホヤぶりで一目瞭然だ。
だが、世間ではやたらとルッキズムが問題視される中で、アスリートの世界だと途端に見た目が重視されるのは「ちょっとオカシイ」と釈然としない人が思いのほか多いようだ。前出のスポーツライターが顔をしかめる。
「海外は特にうるさいですが、実は我々の日本の仕事でも、美しい女性アスリートに対してあえて容姿を褒める形容を付けないで記事を作成する機会は増えました。ただし一方で、男性に対しては〝イケメン〟と平気で使いますし、今回のシュミットのような場合は五輪を盛り上げる一環としてモデル業の画像を使います。あきらかにルッキズムを助長していると言われたら、反論はできませんよね。また、SNSを見ていただければわかりますが、それが日本選手団をテーマにした記事だったとして、使われる画像はルックスで人気のある選手ばかりです。五輪になると途端にルッキズムが無礼講になることで、疑問を呈する人がいるのは当然でしょう」
今回の主人公、アリカ・シュミットに非はないが、ルックスがアトラクティブ(魅力的)ではないアスリートは、メダルを獲らないと注目すらされないのかと考えると少し切ない気がする。パリ五輪はまだ始まったばかりだ。
(飯野さつき)