長年にわたって、オリンピックで数々のメダルを獲得してきた体操日本代表。五輪直前に大きな激震が走った─。88年ソウル、92年バルセロナ五輪体操で銀、銅計4個のメダルを獲得した、池谷幸雄氏に見通しを聞いた。
女子代表キャプテンの宮田笙子(19)が喫煙・飲酒の行動規範違反によりパリ五輪出場を辞退することになった。
「非常に残念なニュースです。宮田選手が出場しないことによって、大体3点から4点くらいチームの得点は下がります。60年ぶりに団体でのメダル獲得を狙っていた女子にとって、エースの離脱は本当に大きな痛手です」
その逆境をチームとしてどう乗り越えるかが躍進の鍵だろう。
一方、男子代表は前回大会の団体でROC(ロシアオリンピック委員会)にわずか0.103点差及ばず、無念の銀メダルに終わった。しかし今回は、「団体金メダル」を目標に掲げている。
「ウクライナ侵攻により、今回はロシア体操代表が不参加になったことはある意味、ラッキーです。そこで悲願の金メダル獲得に向けた最大のライバルは中国となります。ポイントは『吊り輪』の得点差でしょうね。というのも中国は吊り輪が圧倒的に強く、絶対にその点数は日本を上回ってきます。日本としては吊り輪でできるだけ中国に引き離されないようにして、その差を他の種目でどこまで挽回できるか。そこが勝負の大きな分かれ目となります」
男子エースの橋本大輝(22)は前回の東京五輪で、史上最年少にして個人総合の金メダル獲得を果たした。長年、日本体操界をリードしてきた内村航平の後継者として期待されている。
「体操は演技の正確性や美しさを評価するEスコアと、技の難易度を評価するDスコアの合計により順位が決まります。基本的に4年ごとに採点の基準が見直されるのですが、最近は技の難易度に加えて、演技の正確性やより美しい体操を重視するようになっています。つまりEスコアの採点を厳しく見るようになっているんです。具体的には、着地の時に膝が大きく曲がったり、頭が下がりすぎると、止まっていても減点になってしまいます。つまり美しい体操を求めつつ、難易度の高い技も追求しないといけない。選手としては、相当高いレベルの演技が求められているということです。橋本選手は、体操日本代表の持ち味でもある美しい演技もでき、高難易度の技も兼ね備えているので、団体でも個人でも必ず表彰台の一番上に立ってくれると思います」
「オリンピックには魔物がいる」とも言われるが、何とか払拭して頂点に立ってもらいたいものだ。
花の都パリで、日本代表はいくつの大輪の花を咲かせてくれるだろうか。
※本記事は2024年7月30日発売「週刊アサヒ芸能2024年8月8日号」に掲載された内容です