パリ五輪のメダルラッシュが止まらない。男子体操団体、男子スケートボードの堀米雄斗選手、男子フェンシング個人エペの加納虹耀選手、馬術総合「初老ジャパン」…とドラマティックな逆転劇が相次いでいる。将棋の藤井聡太七冠がAI予想で敗戦確率99%となっても最後まで諦めず、集中力を切らさずに「神の一手」で形勢逆転するのと同じ構図だ。
最後まで諦めないメダリスト達の「鋼メンタル」は、どこからきているのか。そのヒントが、日本代表選手が練習拠点にしている「ハイパフォーマンスセンター」(東京都北区)の公式サイトにある。代表選手が受けているメンタルトレーニングの一部を紹介すると…。
〈緊張や興奮のレベルが高すぎても低すぎても、パフォーマンスは低下します。緊張や興奮が高過ぎれば力みや焦り、注意散漫などにつながります。反対に、それらが弱過ぎるとぼーっとしたり、集中できなくなったりします。競技会で実力発揮するためには、自分の競技や個性に合った状態にもっていくことが必要です〉
象徴的なのが男子体操団体で、故障明けのエース・橋本大輝選手を、他のメンバーが背中を叩いて送り出したシーンだ。あれも同センターで教えている「メンタルトレーニングスキル」のひとつで、選手のパフォーマンスを最大限に引き出す手法である。
ヴェルサイユ宮殿やコンコルド広場が競技会場だから面食らってしまうが、思えば体操もスケボーも馬術もフェンシングも、源義経が八艘跳びしていた「源平の合戦」の頃からの、日本のお家芸。無観客の東京五輪で悔しい思いをした選手達の「シン武士道」が世界を席巻しているのだ。
鎌倉の武士達が坐禅でメンタルトレーニングをしていたように、日本人の特性を生かした競技でメンタルトレーニングの成果が出たことが、パリ五輪のメダル量産に結び付いているのだろう。
武士道のひとつ、弓道に通じるアーチェリーは残念ながら、準々決勝で敗退してしまったが、源平貴族も嗜んだ「蹴球」男女サッカーには期待大だ。
(那須優子)