「お兄ちゃんもカープに入団してほしい!」
広島ファンからそんな熱いラブコールを送られている選手がいる。
7月30日に東京ドームで行われた第95回都市対抗野球大会決勝で、三菱重工Eastが14度目の出場で初優勝を果たした。勝利の立役者となったのは、矢野幸耶遊撃手だ。矢野はこの日、2本塁打を含む4安打3打点と大暴れ。チームの全得点を叩き出し、快挙に大きく貢献した。
実は矢野は、今シーズンの広島でブレイクしている遊撃手・矢野雅哉の実兄だ。福岡の名門・福岡第一高校から北陸大学を経て三菱重工Eastに入団し、2022年の日本選手権で首位打者を獲得した。翌2023年には社会人侍JAPANに選出されるなど、チームの主軸として獅子奮迅の活躍を見せている。
兄の活躍に刺激を受けたのか、この日の弟はDeNA戦でライトへの三塁打を含む、4打数3安打3打点。試合後のヒーローインタビューでは、こう言った。
「今日、僕のお兄ちゃんが社会人の決勝で試合だったんですけど、4打数4安打2ホームランで優勝したらしいです。ありがとうございます」
自身の活躍よりも先に、兄の優勝を喜んだのである。スタンドからは「お兄ちゃんのカープ入り待ったなし」「今年のドラフトは兄貴も押さえておくか」などと先走るセリフが出た。
この日は兄弟で猛打賞、ヒーローになるという、まさに「矢野祭り」。兄弟揃って主将タイプで、熱いプレースタイルもそっくりだ。30歳という年齢を考えると、兄・幸耶のプロ入りは現実的ではないが、二塁を守る菊池涼介が来年35歳になることを踏まえ、バックアップ要員の見込みはあろう。兄弟で二遊間を守る姿を見たら、ファンは胸熱だ。
実は兄弟でプロ野球選手という例は結構多く、広島では田中広輔の弟・俊太(オイシックス)が、かつて巨人やDeNAでプレー。上本崇司の兄・博紀は、阪神時代の2014年から2017年まで選手会長だった。中﨑翔太の実兄は、西武でプレーした中﨑雄太だ。
パリ五輪では柔道の阿部一二三、詩の兄妹が大きくクローズアップされたが、野球界における矢野兄弟のインパクトも、なかなかのものといえるのではないか。
(ケン高田)