藤浪晋太郎のアメリカ残留に、阪神関係者が胸をなで下ろしている。
ニューヨーク・メッツは日本時間7月31日、メジャー出場の前提となる40人枠から外していた藤浪を、傘下の3Aシラキーズに所属させると発表した。移籍期間最終日までどの球団も藤浪を獲得せず、藤浪自身が自由契約を選択して浪人、または日本に帰国する選択肢もあった。だがシーズン終了までは、マイナーリーガーとしてプレーすることになった。
このニュースに、阪神関係者は歓迎ムードだという。在阪スポーツ紙遊軍記者は次のように話す。
「もし藤浪が今季中に日本に戻る意思を示していれば、大騒動になっていた。今、阪神は球団史上初の連覇に向けて負けられない試合を続けており、確かに戦力になる投手は欲しい。でも藤浪が戦力になる保証はないですからね」
戦力として計算が立たないなら無視すればいいが、阪神の場合、そんな単純な話では済まない。ある球団OBはその理由として「外圧がある」と指摘し、こう続けた。
「藤浪が日本に戻ってくることになれば、熱狂的なファンは『絶対に獲得してくれ』と大騒ぎする。それを球団が無視して、藤浪が日本ハムやオリックスなど他球団入りを選択すれば、球団への抗議電話が殺到することは間違いないからね」
在阪スポーツマスコミの存在も影響する。前出の遊軍記者は、
「正直にいえば、今年の阪神は昨年ほど盛り上がっておらず、スポーツ紙の売り上げもいまひとつで、起爆剤がほしいところ。藤浪が阪神に戻ってきて優勝争いに貢献すれば、間違いなく売り上げアップが見込めますからね。連日、岡田彰布監督に藤浪関連の質問が殺到することになるでしょう。あまりしつこく質問すれば、岡田監督が気分を害する可能性は十分ですが…」
米球界2年目の今季はメジャーでの登板はなく、3Aで14試合に登板して1勝0敗、防御率10.95では、来季もアメリカでプレーできるかは疑問だ。それでも今季はアメリカに残ることで、阪神にとっては当面の憂いを回避できたことは間違いない。
(阿部勝彦)