「投手より野手の方が才能あるのではないか」
野球ファンからそんな指摘が相次いでいるのが、中日の根尾昂だ。マツダスタジアムで行われた8月4日の広島戦に今季初先発したが、3回を投げて8安打1四球6失点(自責点5)で初勝利を上げるどころか、大炎上した。打者としては、2回二死一塁の場面でセンターへのタイムリー2塁打を放ち、1打点。4回の打席で代打・龍空を送られ、そのままベンチへ退いた。
根尾はチーム99試合目での初先発だった。ローテーション入りを懸けての登板だったが、わずか1試合で2軍での再調整が決定した。いまだ投手としての光明が見えない根尾に「コンバート失敗」の声が出るのもやむなし、である。
根尾は2018年のドラフトで中日、日本ハム、巨人、ヤクルトの4球団から1位指名を受け、抽選の結果、中日が交渉権を獲得。高卒選手としては最高条件となる契約金1億円、出来高5000万円、年俸1500万円の契約を結んだスター選手だ。2軍での育成時代は野手として登録していたが、2022年のセ・パ交流戦終了後、立浪和義監督との話し合いの結果、次年度以降は投手に専念することが明らかになった。
ファンの間では、まだ1勝もできない根尾に対し、諦めの声が上がっているが、同時に野手へのコンバートを決めた立浪監督への恨み節も渦巻いている。「育成の日本ハムに行ったら成功していたかもしれない」として、ChatGPTによる根尾の成績予想まで展開されているのだ。
それによると、日本ハム選手としての根尾は、2023年までにすでに38勝を上げ、打者としても2割5分から3割の打率を残すなど、立派な主軸選手に成長している。少なくともAIは、立浪監督の判断よりも、日本ハムの育成能力を評価していることがわかる。
根尾の投手コンバートは当初からファンのみならず、野球評論家からも疑問の声が上がっていた。そもそも中日は根尾を1位指名した時、どんな育成プランを描いていたのか。同じ4球団が競合した広島の小園海斗は、1年目こそ1軍で58試合に出場したものの、翌年は1年間、2軍でみっちりと練習を積み、プロとして通用する体と技術を磨いた。たらればの話は意味がないとはいえ、育成がうまいい球団に入っていれば、現在のような成績でくすぶってはいなかったかもしれない。
根尾は8月4日の試合で、そのライバル小園にタイムリーを含む2安打を浴び、存在感の違いを見せつけられた。これはショックだったのではないだろうか。もし現役ドラフトのリストに根尾の名前が記入されたら、野手として育てたいという球団が多数、手を挙げるかもしれない。
(ケン高田)