「お前が言うな!」
プロ野球ファンからそんな声が聞こえてくるのは、ヤクルト・高津臣吾監督の「激高」に対してだった。
8月13日のヤクルト×中日戦(神宮)、9回裏。2点を追うヤクルトの先頭打者、岩田幸宏がマルティネスから左手首付近に死球を食らう。
するとヤクルトの嶋基宏ヘッド兼バッテリーコーチと中日の大西崇之外野守備走塁コーチがそれぞれベンチを飛び出し、一触即発状態に。そこで高津監督は、広島弁でこう怒鳴ったのだ。
「何回、当てとんねん! こっちは骨折もしとんのじゃ!」
そして中日の片岡篤史ヘッドコーチとの激しい言い争いが展開されることに。
この乱闘騒ぎにスタンドの観客はどよめくも、中日の立浪和義監督がなだめる形で仲裁に入り、その場はどうにか収まった。だが審判団からは、警告試合が発せられた。
振り返れば7月31日の試合では、ヤクルトの赤羽由紘に中日・松木平優太の直球が直撃し、左手の甲を2カ所骨折して戦線を離脱している。これが伏線となって、高津監督がキレてしまったようである。
ヤクルトファンにとってはたまったものではないが、一方でヤクルト投手陣の制球難を知るファンはアキレるばかり。
ヤクルトは昨年、リーグ2位の63与死球を記録した。8月13日の試合では、阪神・梅野隆太郎がヤクルト・今野龍太から死球を受け、左尺骨を骨折。シーズンを棒に振っている。
その前の8月3日にも、山本大貴が阪神・近本光司にブチ当て、岡田彰布監督を「情けないのお。そういうチームなんやろ」と激怒させている。
ヤクルトはこれまで、死球でたびたび騒ぎを起こしてきた。今季は3月29日の中日との開幕戦で、先発のサイスニードが中日・ディカーソンに死球一番乗り。ファンからは「ヤクルト名物死球」「今年もヤクルトは死球三昧か」などと揶揄されている。中日ファンにしてみれば、高津監督の激高はまさに「お前が言うな!」なのである。
昨年8月23日の巨人×ヤクルト戦では、小川泰弘が投じた142キロのボールが坂本勇人の頭部付近へ。坂本はとっさにしゃがんでよけたものの、指に当たってしまった。主審は坂本に当たったかどうかを確認し、死球を宣告したが、高津監督はこれを不服としてリプレー検証を要求。ビデオ検証の結果、死球判定は覆らなかったものの、坂本への敬意を欠く行為に対し、大ブーイングが吹き荒れた。
阪神・梅野への死球の際には「攻めた結果だと思う」と、どこ吹く風だった高津監督。自軍の選手の死球にばかり目くじらを立てていては、同情の声すら上がらないのは当然だろう。
(ケン高田)