8月14日、大会8日目の「夏の甲子園」は2回戦が行われ、MAX149キロの2年生・森陽樹投手をはじめとするエース級の投手を数多く擁し、強力打線も相まって優勝最有力といわれた「大阪桐蔭」が0-3で敗れるという波乱があった。
しかも、小松大谷のエース・西川大智投手の投球数は92球、いわゆる100球未満の〝マダックス〟での完封劇に「ウソだろ」と、多くの人が大阪桐蔭の早期敗退をにわかには信じられないといった様子だ。
しかし、8日目は第1試合で選抜優勝校の「健大高崎」が敗退しているように、これまでにすでに智弁和歌山、報徳学園、花巻東、明豊、花咲徳栄など、優勝を期待された強豪校が次々と敗れ去っている。しかも、ほとんどがその自慢の打棒をまったく見せないまま…。
そして、大阪桐蔭が「何もできないまま」甲子園を去ることとなり、今大会から採用された「低反発バット」への不満が漏れ始めているという。
「優勝候補がまだ他校が余力のある1、2回戦で番狂わせ的に負けることは甲子園の歴史で珍しくありません。しかし、これだけ続くと他に原因があることは明瞭です。その原因が『低反発バット』でしょう」(野球記者)
最大直径を従来より3ミリ短い64ミリに縮小し、球の当たる部分を3ミリから4ミリ以上に厚くすることで反発性能を抑えたというバットが採用されているが、これにより打球の平均速度や初速がともに3%以上も減少したと言われている。
「大阪桐蔭の27アウトのうち、13個が内野や外野へのポップフライでした。バットの芯が短くなったことで、投手はタテの変化をメインとした投球になる傾向があります。ウイニングショットは外角のスライダーが圧倒的に多く、そのせいでワンバウンド投球が増えているのが特徴です。それでも、かつてのバットなら力のある打者は低めをすくい上げて外野手の頭を越すことが可能でしたが、今大会はフライが力なく真上に上がって伸びない。会心の当たりに見えても外野が追いつく…そんな場面が非常に多く見られます。大阪桐蔭の試合までで27試合が行われましたが、1試合の平均得点がタイブレークを除けば6.5点とやはり少ない。しかも、本塁打はまだ4本。総じて迫力のない試合展開を嘆くファンが日に日に増えているのは事実です」(スポーツ紙記者)
とはいえ、守備のいいチーム、少ないチャンスをモノにできるチームが勝ち進むのは悪いこととは言えないはずだが、
「現在、国内の野球については、プロ野球は投高打低が顕著です。でも、夏の甲子園といえば金属バットの『カキーン』というあの音が風物詩と言えますが、ついにそれまで聞けなくなるのかと失望の声が多いのです。甲子園の外野席に陣取った観客からは『外野手が(前進守備ばかりで)遠くてつまらない』なんて意見がありましたから、学生スポーツとはいえ再考する部分はあると思います」(前出・スポーツ紙記者)
今や日本人にとって野球の象徴は「大谷翔平」だと言っていい。そう、メジャーの本塁打王である。一方で、国内の野球は競技人口や人気に陰りがあることが常に問題視されている。
ルールに振り回される球児には何の罪もないが、こぢんまり野球でスターが生まれない国内の現状を見る限り、夏の野球シーズンぐらいは「凄い打撃が見たい」と思うのは、ファンの偽らざる本音だろう。
(高木莉子)