プロ野球のセ・リーグは、球史に残る大混戦が続いている。レギュラーシーズンが残り40試合を切り、上位の中で抜け出すためには、連勝と連敗がその差を分ける。総力戦へと移りつつある中で目を見張るのは、巨人と広島の相反するベンチワークだ。
巨人の阿部慎之助監督は勝負に徹し、選手に高いレベルのチームプレーを求める。精神的な甘さがある秋広優人は2軍で塩漬けに。原辰徳前監督と同じように、メディアを通じて厳しいコメントを飛ばし、たとえベテランであっても容赦はない。6月にまるで打てなかった坂本勇人に対しては、スタメンを外した上で再調整を言い渡し、登録を抹消。ジャイアンツ球場でミニキャンプと走り込みをさせている。
ミスに厳しい「昭和型」。それが阿部監督だ。8月10日にスタメン起用されたものの、攻守で精彩を欠いた中山礼都には、
「まだ1軍では使えないのかな、と判断した」
すぐさま2軍落ちを通告する鬼采配を炸裂させた。
一方の広島・新井貴浩監督は選手に対し、こう説いている。
「お前たちはカープという大きな家にいる。チームは家族」
そして、ミスにも優しいのである。
褒めて伸ばすことが前提で、選手を叱責することはなく、メディアを通じて苦言を呈することもない。コーチに対しても、選手を一方的に叱るのではなく、対話をするように求める。失敗しても次の出場機会、挽回の機会を与える「令和型」の指導を貫いている。
冷酷な阿部監督と、温和な新井監督。なんとも対照的なチームカラーなのである。
(渡辺優)