社会

南海トラフ地震臨時情報でわかった「防災に強い観光地、弱い観光地」

 8月8日に気象庁が初めて発表した「南海トラフ地震臨時情報」は、15日に「呼びかけ」を終了した。だが「臨時情報」は津波注意報や大雨特別警報のように「津波や土砂災害のおそれがなくなった」などと「解除」されることはない。

 8月8日夕、日向灘で起きた最大震度6弱の大地震後、当該地域の地震活動は活発な状態にあり、南海トラフ地震が発生する可能性が強まった…そんな「臨時情報」を国民に周知したにすぎず、100年から150年周期で起きている南海トラフ地震の危機が去ったわけではない。早ければ明日、遅くても今世紀中にはM9クラスの地震が確実に起きるのだ。

 まして今年の元日には里帰りした子供や孫、親族が古い木造住宅に集まったところを、能登半島地震が襲ったばかり。2011年3月9日、三陸沖を震源とするM7.3の地震の2日後にの東日本大震災が発生し、熊本地震でも本震と思われれた2016年4月14日のM6.5地震から2日経った4月16日に、M7.3の本震が起きている。

 お盆に親族が集まったところにM9.0クラスの地震と最大30メートルの津波が押し寄せなかったことだけでも「良き」と受け止める人ばかりでないのが、この世の常。さっそく新聞や地方テレビ局は国の対応を批判し、経済的損失をクローズアップしている。SNSには警戒対象地域の住民から「8日の津波にしても、たった数十センチだったのに騒ぎすぎ」という恨み節が書き込まれた。

 念のために書いておくと、津波や豪雨災害に伴う水流は水深30センチでも身動きが取れなくなり、溺死する危険性が高い。津波到達は沿岸部では早ければ5分で、足腰の達者な若者が安全な高台に逃げるだけでも、ギリギリの時間しかない。

 だからこそ無責任な批判のせいで、今後の「南海トラフ地震臨時情報」の発令が躊躇されたり、萎縮されることがあってはならない。何も起きなかったから「後出しジャンケン」で文句が言えるのだ。

 きちんと対策をとった自治体もある。和歌山県白浜町や神奈川県平塚市では、海水浴場を閉鎖した(白浜町は8月15日に再開)。徳島県徳島市の阿波踊り会場では避難経路を掲示の上、スタッフが案内。静岡県下田市、神奈川県藤沢市と逗子市の海水浴場でもスタッフや市役所職員、警察官がパトロール巡回する対応をとった。

 今回の「臨時情報」でわかったのは、そうした防災意識の高い観光地と、防災意識に欠ける観光地があるということだ。土地勘のない観光地で地震があった時に高台に誘導してくれるスタッフがいれば安心だが、「たった数十センチの津波で…」と防災意識を欠いた従業員、避難訓練不足の住民だらけの宿泊施設や観光地では、地震や津波、火事が起きた際の避難誘導すらままならないだろう。地震でパニックを起こした外国人観光客や避難にもたつく住民に行く手を阻まれる観光地は、できれば避けたい。

 神奈川県では臨時情報が出た翌日の8月9日に最大震度5弱、14日にも最大震度3の地震があった。北米プレートの向こう側、米カリフォルニア州ロサンゼルスでも現地時間8月12日に、M4.4の直下型地震が起きている。

 日本のみならず、地球上のどこに行っても地震と津波のリスクから逃れられないのなら、土地勘のない観光客向けの防災対策をとっている観光地を選んで訪れるフェーズに入ったのかもしれない。

(那須優子)

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