札幌競馬場で行われた8月18日のGⅡ・札幌記念(芝2000メートル)は、5番人気のノースブリッジ(牡6)が勝利。本連載の前編(8月20日公開)では〈1着ノースブリッジの次走は「消し」、4着プログノーシスの次走は「買い」〉と題し、今秋以降の古馬GⅠレースを含めた重賞戦線に向けての「勝利の方程式」について述べた。
ノースブリッジ同様、2着馬のジオグリフ(牡5)も、次走以降には疑問符がつく。同馬の2着は、スローペースの3番手をソツなく進み、そのままゴールになだれ込んでのもの。次走以降での再現性は極めて低いと言っていい。
同様に、ステラヴェローチェ(牡6)の3着も、5~6番手の内から流れに乗って脚を伸ばしたもので、やはり次走以降での再現性は低い。ジオグリフも含め、実力以上の人気を背負うようなら「迷わず消し」が勝利の方程式となる。
そんな中、逆に次走以降の重賞戦線での「激走」を予感させる「お宝馬」がいた。名伯楽として知られる堀宣行調教師が送り出した、チャックネイト(騙6)だ。
同馬の重賞勝利はGⅡ・アメリカジョッキークラブカップのみだが、3頭のGⅠホースが出走してきた今回の札幌記念に、あえて参戦(単勝59.2倍)した。
レースではスタートから積極的な位置取りを見せながら、3~4コーナーでは中団(6番手)の外から3番手まで追い上げる。「もしや!?」の見せ場を作ったが、最後の直線で伸びを欠き、8着に終わった。
しかし今回の敗因には、明確な理由が存在する。札幌記念が行われた芝コースは高速馬場に仕上がっており、良馬場でのスピード持続力に難点のある同馬にとっては、能力を全く発揮できない舞台だったのだ。
実はレース前、堀調教師はマスコミの取材に「馬場が悪くなればチャンスはある」とホンネを漏らしていた。事実、同馬の唯一の重賞勝利は、不良馬場でのもの。したがって馬場が悪化すれば、次走以降の重賞戦線で「激走」の可能性がある。
加えて芝の1800~2500メートルという、異なる距離で安定した成績を残していることも、同馬の潜在能力の高さをよく示している。芝の稍重から重、ないしは不良という条件こそつくが、スタミナを要する馬場になればGⅡ戦線どころか、GⅠ戦線でも勝ち負けになる超穴馬なのである。
なにしろ堀調教師が手塩にかけて育て上げてきた逸材。今回の凡走でさらに人気を落とすようなら「迷わず狙え!」である。
(日高次郎/競馬アナリスト)