「知っている人は得をしている 宝石の価値」諏訪恭一/836円・新潮新書
国内外に56店舗を構える装身具の名店「SUWA」の3代目にして宝石商のレジェンドと呼ばれる諏訪恭一氏。宝石の楽しみ方から選ぶ基準、資産価値、さらに「婚約指輪は給料の3カ月分」という業界の思惑など、これまで誰も語らなかったジュエリー業界の舞台裏を明かす!
魚住 大好きな宝石について、お話を伺うのを楽しみにしてました。
諏訪 ありがとうございます。今つけていらっしゃるラウンドブリリアンカットのイヤリング、とてもステキですね。ダイヤモンドもそのぐらいの大きさになると存在感が出て、魚住さんに非常にマッチしています。
魚住 ハイジュエリーのブランドの宝石でなくても、1カラット以上はあった方がいいのかなと思って、頑張って買いました(笑)。
諏訪 それは賢明です。宝石はサイズがすごく大事です。でも、大きすぎると品がなくなるので、すごくいいと思います。ブランドにこだわってしまうと、宝石の価値以上の値段のものを買うことになってしまいますから。
魚住 本当の価値がわからないまま、お店で勧められたものを買っている方がとても多いと思います。私はこの本を読んで宝石の概念が変わりました。単なるアクセサリーではなくて、株や土地と同じように、資産なんですね。
諏訪 株や土地よりも価値があると思います。私が20年前に、オークションで落札した1カラットのブルーダイヤモンドを、ある方が推定2000万円で購入しました。2年ほど前、その方の依頼でオークションに出品すると、破格の7000万円で落札された。石自体の品質がよかったことに加えて、1カラットという、滅多にない大きさの希少価値が評価されたのだと思います。買った時の値段や手数料を差し引いても、4000万円ほど利得を得たことになります。
魚住 すごいですね! 他にも親が残してくれたサファイアを売ることで遺産相続問題を円満に解決したり、戦前に父親が残したダイヤモンドで、戦後、娘の花嫁道具をそろえたりといったエピソードも紹介されています。宝石にはすごく資産価値があることを実感しました。
諏訪 株は損をすることもあるし、土地は動かせない。金は重いから有事の時、たくさんは持ち出せません。宝石だったらポケットに入れて持ち出せます(笑)。
魚住 身につけて心を豊かにした後に、手軽に売ることも、遺産として残すこともできる。宝石ってすごいですね。
ゲスト:諏訪恭一(すわ・やすかず)1942年、東京都生まれ。諏訪貿易株式会社会長。慶應義塾大学経済学部卒。名店SUWAを経営する、宝石商の3代目。日本人で初めて米国宝石学会(GIA)宝石鑑別士の資格を取得。国立科学博物館の特別展を監修するなど宝石文化の普及にも努める。諏訪恭一出版記念 特別講演会「宝石 私の判断基準 宝石はなぜ価値があるのか」を10月16日(水)国際文化会館 岩崎小彌太記念ホールで開催。URLhttps://www.gemtrigon.com/
聞き手:魚住りえ(うおずみ・りえ)大阪府生まれ、広島県育ち。慶応義塾大学文学部卒。1995年、日本テレビにアナウンサーとして入社。報道、バラエティー、情報番組などで幅広く活躍。04年に独立し、フリーアナウンサーとして芸能活動をスタート。30年にわたるアナウンスメント技術を生かした「魚住式スピーチメソッド」を確立し、現在はボイス・スピーチデザイナーとしても活躍中。