大関に昇進しながら、満足に勝ち越せたのは2022年の春場所(11勝4敗)のみという不名誉な記録を持つ御嶽海。言い換えれば「史上最弱の大関」とでも…。
この年の初場所を13勝2敗で優勝し、翌場所に大関に昇進した時は、次期横綱の最右翼。春場所でも11勝を挙げたると、そう遠くない将来に綱を締めている姿を想像したものだ。それが大関から陥落しただけでなく、平幕で低迷するとは…。
落とし穴は夏場所初日にあった。高安戦に勝ちはしたが、右肩を痛め、相撲を取る稽古もできない有様に。この場所、御嶽海は6勝9敗で終わった。
翌場所も同じ状態が続いたが、コロナが蔓延。出羽の海部屋には感染者が12人も出て、御嶽海は途中休場となった。相撲ライターが言う。
「御嶽海は右肩を痛めて、最大の武器である速攻相撲ができなくなった。土俵際までは押し込めますが、一気に土俵の外まで相手を寄り切れなくなったんです。結局、大関として3場所連続負け越し、陥落することに」
コロナ時代は出稽古にも行けなかった。今年の名古屋場所は久しぶりに西前頭2枚目に位置し、上位陣総当たりとなった。結局、7勝8敗で負け越したが、初日は先場所優勝した大の里を、立ち合い一気に持っていく気合いの押し相撲で撃破。大関・琴桜は土俵際の投げの打ち合いで退けた。
「御嶽海らしさが戻っている。名古屋場所は2番だけだったが、4・5番取れるようになったら、再び上位で活躍することができるでしょう」
先の相撲ライターは、そう言って希望を見出すのだった。
(蓮見茂)